フランス ワクチン接種証明の提示義務化に反対 大規模デモ
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つまり義務と権利の相克のような構造に、欧州は陥っているわけです。この辺り、疫病が問いかけたことは、社会と個人にとって、非常に本質的なことだったのだと感じます。
経済的には、接種証明を保持する人の消費や活動の水準上昇が見込める反面、保持していない人の消費や活動の水準低下が生じるため、マクロ的な分岐点を見誤ると、メリットがデメリットを下回り、景気の下押しにつながる可能性が警戒されます。このデモの参加者は、非常に雑多だ。中には、陰謀論を信じてワクチンに反対する者も混じっている。そうかと思えば、国が国民の命を守るのなら、個人の自由を侵害するのではなく、さらなる公的医療体制の充実を図るべきだと論理的に訴える者もいる。ちなみに、人口約6700万のフランスでは、7000人超の集中治療感染者が出ても医療崩壊など起きなかった。仏政府は、14000床まで準備をしていると発表していた。それを、もっと増やせと言うのだ。ただ、自分の知る範囲では、普段は政府に非常に厳しいフランス人の研究者仲間たちも、この衛生証明(pass sanitaire)に関しては止むを得ないという感じで受け止めているようだ。やはり、11万人以上の死者という事実は大きい。
そもそも論として、フランス国内では学校から建物から公的な刊行物まで、ホント至る所にLiberté, Égalité, Fraternitéの標語が掲げられています。
この記事でも見られるようにデモ参加者は右・左・普通の人と色々で、その理由もワクチンへの賛否含めて様々。
それが「パス・サニテール反対」で揃うフランスの事情として、パス義務化がLiberté(自由)に対する脅威であると共に、接種者と未接種者が異なる権利を持つ社会の階層化をもたらすというÉgalité(平等)に対する挑戦であるという論理が革命前の身分制の想起も含めてフランス人には理解を得やすい点はあると思います。
社会の実態はともかく、教育で革命の歴史を叩き込まれたフランス人には制度的な社会の階層化を強烈に嫌う一面があります。
他方でマクロンは「自由とは他者を守り他者の自由を尊重することで存在します」という動画を休暇先からInstagramやTiktokに投稿しましたが、これはFraternité(友愛)の面から説得を試みたものと解釈できるかもしれません。
このような原則論のガチンコはフランスらしいと思う一方で、フランス人でもない自分としては正直議論はそれとしてまずはワクチンうってよという気持ち。 実際、医療や経済面でより影響が大きいのはパス義務化がもたらすワクチン接種の強制という側面です。
この面ではマクロンが賭けに勝ちつつあるのは接種率の数字的に否定できません。欧州各国は夏季休暇に加えてワクチン疲れ(vaccine fatigue)と呼ばれる接種率の伸び悩みのダブルパンチに面しており、休暇明けの新学期と共に予想される感染拡大をどう抑えるかが次の焦点になっています。
この点では接種率で先行した英国もワクチン疲れに直面しており現在はモデルケースと言えなくなりつつあります。
https://www.theguardian.com/world/2021/aug/06/six-eu-states-overtake-uk-covid-vaccination-britain-rollout-slows
他方で謎なのがスペイン。夏季休暇もワクチン疲れも無いかのように接種が続いており英国はおろか勢いそのままカナダも抜く勢いです。そろそろ現地事情の分析の報道が欲しいところです。