(ブルームバーグ):

半導体メーカー、米エヌビディアによる英半導体設計会社アームの買収計画について、英国は安全保障にリスクが及ぶ可能性を理由に、阻止することを検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

エヌビディアは昨年9月、アームをソフトバンクグループとソフトバンク・ビジョン・ファンドから400億ドル(現在のレートで約4兆3600億円)で取得すると発表した。

ダウデン英デジタル・文化・メディア・スポーツ相は4月、アーム買収計画が反競争的なのかどうかについて、また第三者が提起した国家安全保障上の懸念があればその要旨も報告書にまとめるよう競争市場庁(CMA)に求めた。

7月下旬に提出された報告書には安全保障面での懸念すべき影響が含まれ、英国は現在のところ計画を認めない方向に傾いていると、政府協議に詳しい関係者1人が述べた。英政府は安全保障の面からさらに踏み込んだ精査を行う可能性が高いと、別の関係者の1人が述べた。

関係者らによれば最終決定は下されておらず、英国は一定の条件付きでアーム買収を承認する可能性もある。英競争当局によるさらなる調査が必要かどうかは、ダウデン氏が判断する見通しだ。

エヌビディアの広報担当者は「当社は引き続き、英政府の規制手続きに取り組む」との声明を発表し、「質問には前向きに応じる。いかなる問題があっても解決できると期待している」と続けた。

3日の取引でエヌビディアの株価は一時2.7%下落する場面があった。

CMAの報道官と英当局者はいずれもコメントを控えている。

AI投資戦略の要

ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏は2016年にアームを320億ドルで買収して以来、同社を人工知能(AI)関連分野への投資戦略の要と位置付けてきた。アームはソフトバンクグループの純資産価値(NAV)の約10%を占め、保有株の価値ではアリババグループ、ビジョン・ファンドに次ぐ3番目の大きさとなっている。

孫氏は「ビジョン・ファンド2」を通じたスタートアップ企業投資を強化しており、アーム売却で得る資金をこの取り組みに充当し得る。エヌビディアは、アーム買収が実現するかどうかにかかわらず、ソフトバンクグループへの20億ドル支払いにコミットしている。

規制当局によって売却が阻止された場合、ソフトバンクグループはアームの新規株式公開(IPO)を目指す公算が大きいと、事情に詳しい関係者2人は語った。アームのサイモン・シガース最高経営責任者(CEO)は7月のブログ投稿で、「アームとエヌビディアの統合の方がIPOより望ましい」との見解を示していた。

原題:U.K. Considers Blocking Nvidia Takeover of Arm Over Security (3)(抜粋)

(純資産価値の情報などを追加して更新します)

©2021 Bloomberg L.P.