[東京 2日 ロイター] - 国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・アダムス広報部長は2日の記者会見で、コーチ陣を公に批判した後、帰国を迫られ羽田空港へ連れていかれたベラルーシの女子陸上クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(24)について、同選手は安全な状況にあり、当局が保護していると明らかにした。ポーランドとチェコは、同選手にビザ(査証)を交付するなどして支援する用意があると表明した。

アダムス氏によると、ツィマノウスカヤ選手は羽田空港で日本の警察に保護を求めた後、空港の施設で一夜を明かした。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など複数の機関が同選手と連絡を取っているという。

ツィマノウスカヤ選手は2日の東京五輪陸上女子200メートル予選に出場予定だったが、1日に帰国を迫られ羽田空港へ連れていかれたと明かしていた。

同選手がメッセージアプリを通じてロイターに述べたところによると、ベラルーシのヘッドコーチが1日に部屋に来て帰国を指示した。だが同選手は航空機への搭乗を拒否し、ロイターに「ベラルーシには帰らない」と語った。

ベラルーシのオリンピック委員会は、ツィマノウスカヤ選手の「感情的、精神的な状態」に関する医師の判断に基づき、コーチ陣が同選手の欠場を決めたとする声明を出している。

ベラルーシ陸上代表のヘッドコーチは国営テレビで同選手について、「どこかおかしいのが分かった。彼女は引きこもったり、話すのを嫌がったりした」などと語った。

アダムス氏は、IOCが引き続きツィマノウスカヤ選手から話を聞く予定だとしたほか、ベラルーシオリンピック委員会に詳細な報告を求めたことを明らかにした。

ベラルーシのルカシェンコ大統領は、旧ソ連の同国を厳しく支配している。

アダムス氏は、選手村にいる他の選手の安全確保に向けIOCとしてどのような措置を講じるのかとの記者団の質問に対し、何が起きたのか詳しい情報を依然収集しているところだと述べた。

また、ベラルーシ国内での一連の抗議活動を受け、IOCは大会開催前に同国オリンピック委員会に対し複数の措置を取ったと説明した。

ポーランド外務省の当局者はツイッターへの投稿で同選手には「人道的ビザの付与を申し出た。望むのであればポーランドで競技キャリアを続けられる」とした。

チェコのクルハーネク外相は同選手を巡る状況は「スキャンダラス」だとし、「チェコは支援する用意がある」とツイッターで表明。チェコで「国際的な保護を申請できるように同選手にはチェコ入国のためのビザ付与を提案している。東京にあるチェコ大使館も支援する用意がある」と述べた。

*内容を追加しました。