[東京 30日 ロイター] - 政府が緊急事態宣言の対象地域拡大や期間延長を決めたことで、日本経済の損失が2兆1900億円となり、東京五輪・パラリンピックによる経済効果の1兆6700億円を上回ると野村総合研究所の木内登英・エグゼクティブ・エコノミスト(元日銀審議委員)が試算した。

また、今年7─9月期の日本の国内総生産(GDP)は、当初予想の前期比・年率で2ケタのプラス成長から2─3%程度の低成長にとどまるとみている。

木内氏の試算によると、東京都と沖縄県に発令されている緊急事態宣言が8月31日まで延長され、7月12日からの経済損失が1兆2500億円。神奈川県など4府県への新たな発令で9400億円の損失が発生し、合計で2兆1900億円の損失となる。この規模は年間GDPの0.40%に相当、失業者が約8万7000人発生すると見込んでいる。

一方、東京五輪・パラリンピックの経済効果は、東京五輪の大部分の会場が無観客開催となったことで1337億円程度が減殺され、全体として1兆6771億円になったと試算していた。

今回、政府が緊急事態宣言の地域を拡大し、東京都などの発令期間を延長したことで、経済損失が経済効果を上回ってしまったと結論付けている。

木内氏は日本のGDPについて、今年1─3月期のマイナスに続き、4─6月期もマイナスとなった後で、7─9月期は輸出増加の追い風などで前期比・年率で2ケタパーセントの増加を見込んでいた。しかし、今回の政府対応で「年率でプラス2─3%程度といった低めの成長にとどまる可能性が高まっている。そして10─12月期には、輸出の増勢鈍化などから成長率はさらに低下するだろう」と予測している。