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日本のカーボンプライシングの代表的なものは地球温暖化対策税ですが、これは税額が低すぎると長年批判されてきました。ただ、日本の場合はそもそもエネルギー価格が高く、石油石炭税はじめ多様な課税がなされているので、一概に低いとも言えません。
また、プライシングしようにも、製造過程で排出されるCO2の正確な捕捉は困難だという技術的課題もあります。(日本なんてかなり正確に把握してる方かと…)
この経済状況でのさらなる負担増には抵抗も強いでしょうが、カーボンプライシングも避けられない国際的潮流です。年内に方針をとのことですが、日本にとって不利なルールが固まってしまう前に、議論が加速することを期待してます。
カーボンプライシングと一言でいっても、かつて排出権取引と呼ばれたEU-ETSのような排出量取引市場から、国内で課税権を持つ政府が排出量に応じて課税する炭素税、EUで検討されている輸入する製品に対し製造時の排出量に応じいかにも輸入関税のように課金する炭素国境調整と、誰が誰のどんな排出量に課金するかで全く意味が違ってきます。
排出量取引
企業等が他の企業の基準値からの排出削減量を買う
企業間の削減コストに差がある場合、一定の基準に対して削減コストの最適化の効果があるが、基準ライン設定が全てでそこが政治闘争になる。厳し過ぎる基準では、市場取引による最適化効果は減る。脱炭素目標に対しては排出量がマイナスのプレイヤーがいないと成立しなくなる。
炭素税
政府が国内の経済活動に課税する。課税権という近代国民国家の特権を使うもの。国内の排出量削減の観点では、経済理論上最適化されるが、課税率や免除条項、財源が利権となりやすい上、他の利害調整とのバランスが難しい。多重課税になる。
炭素国境調整
政府が国外からの輸入製品に課金する。WTO違反になる。
おまけに、バイデン政権はEUのめんどくさい方式ではなく、国単位で炭素国境調整をやろうと議論していて、これは国家のさじ加減一つで輸入関税を設定できる典型的な保護貿易政策と実質的に同じなので、本来なら明確にWTO違反になるでしょう(たしかオバマ政権時代に米国は炭素国境調整に反対している)。バイデン政権の方針は、直接国家間の対立を生むので、極めて危険な経済戦争に突入する可能性があります。
こうした動きに対し、日本の安全保障関係者は大きな懸念を持っています。気候変動政策が戦争の引き金にならなければ良いのですが。
日本の議論再開は、EUやバイデン政権の動きに乗じた炭素国境調整の検討が大義名分だったわけですが、はっきりいって対抗策として導入するのはあまり得策ではないでしょう。
かつて潰された、国内炭素税の議論のほうが、まだフェアで経済合理的になる可能性が理論的にはありますが、利権調整が極めて難しい上に、エネルギー安全保障や雇用問題との齟齬が生まれます
森林の所有権の整理と集約がこれからの大きな政策課題になりそうです。