[29日 ロイター] - 米アマゾン・ドット・コムは29日、売上高の伸びが今後数四半期にわたって鈍化するという見通しを示した。新型コロナウイルス禍で急拡大していたインターネット通販利用が一服しつつあることが背景。

同社は今月、最高経営責任者(CEO)が前任のジェフ・ベゾス氏からアンディ・ジャシー氏に交代したばかりで、ジャシー氏は難しい経営の舵取りを迫られそうだ。

売上高の伸び率は第2・四半期に27%と、前期の44%から鈍化。第3・四半期は最大でも16%にとどまるとの見通しを示した。有料プライム会員からの収入が減速しているという。引け後の時間外取引でアマゾンの株価は7%下落した。

第3・四半期の売上高見通しは1060億─1120億ドル(10─16%増)と、リフィニティブのまとめたアナリスト予想の1189億ドルに届かなかった。

アマゾンのブライアン・オルサブスキー最高財務責任者(CFO)は増収率の鈍化見通しについて、昨年は消費者が家で長い時間を過ごし、日々必要な買い物もネットで済ませていたが、欧米では現在、外出する人が増え、人々は「買い物以外のこともするようになった」と指摘。売上高の伸び鈍化は数四半期続く見込みだと述べた。

第2・四半期決算は、純売上高が1130億8000万ドルと、前年同期の889億1000万ドルから増加したものの、市場予想の1152億ドルを下回った。北米の伸びは22%と、前年同期の43%から半分近くに鈍化した。

一方、クラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の売上高は37%増の148億ドルで、予想の141億ドルを上回った。

利益は48%増の78億ドルと、過去2番目の大きさとなった。今第3・四半期の営業利益は25億─60億ドルを見込む。コロナ関連費用が10億ドルになるとの前提を置いている。

エドワード・ジョーンズのアナリスト、ブライアン・ヤーブロー氏はアマゾンが急成長を維持するのは「現実的ではない」と分析。「ネット通販の伸び率は10─12%のレンジに減速するだろう。事業の規模の大きさを考えれば、依然として驚異的な伸び率だ」とした。

一方、アマゾンのコストは増え続けている。ジャシーCEOに10年かけて2億ドルの株式報酬を支払う予定のほか、労働者不足のさなかに7万5000人の従業員を確保するため、時給を米国の最低賃金の2倍強の17ドルに設定し、ボーナス支給も約束している。50万人超の従業員を対象に賃上げも計画しており、10億ドル以上の費用増を見込む。

アマゾンは最近、アラバマ州の物流倉庫で労働組合の結成を目指す動きが出たり、新型コロナウイルス感染予防策について従業員が抗議するなど、労働者の不満に直面してきた。

コロナ対策に関しては、グーグルの持ち株会社アルファベットやフェイスブックなど他のIT大手は今週、オフィス勤務に復帰する従業員にコロナワクチン接種を義務付ける方針を発表したが、アマゾンはまだ、オフィス勤務の従業員や倉庫職員、ドライバーについて、ワクチン接種を義務化するかどうかの方針を示していない。

オルサブスキーCFOは、業界の活動再開や政府からの支給金、学校再開が個人の労働意欲に影響を及ぼすなか、当面は賃金に上昇圧力がかかり続ける見込みだと説明。「労働市場の競争は激しくなっており、われわれが事業で目にする限り、インフレ圧力の最大要因となっている」と述べた。