2021/8/2

【フェムテック入門】生理の話はタブーじゃない

女性の健康課題をテクノロジーの力で解決する、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語「フェムテック」。2020年は日本の「フェムテック元年」と呼ばれ、さまざまな商品やサービスが誕生しました。山本未奈子さんが代表を務める「Bé-A Japan<ベアジャパン>」が開発した超吸収型サニタリーショーツ「Bé-A〈ベア〉」も2020年に発表され、半年で3万枚を売り上げるほど話題に。その背景には何があるのでしょうか。
本記事はNewsPicksとNTTドコモが共同で開発し、7月19日からスタートした新メディア「NewsPicks +d」の編集部によるオリジナル記事です。全3回連載のうち第1回目を一般公開しております。第2回目以降はNewsPicks +dでお読みいただけます。NewsPicks +dは、NTTドコモが提供している無料の「ビジネスdアカウント」を持つ法人・事業所とその従業員向けのサービスです(詳しくはこちら)。

女性の社会進出が原点

「フェムテック」市場が世界的に盛り上がっています。そのサービスや商品は、たとえば排卵日を予測する生理管理アプリから、低容量ピルのオンライン処方など多岐にわたります。
各ジャンルの内容と商品例
月経/月経アイテム・月経トラッキングに関する商品。日本では2000年に始まったアプリ「ルナルナ」が代表的。アメリカではオーガニック生理用タンポンのサブスクリプション(定期購入)サービス「Real」なども登場。
○妊娠・子育てケア/妊娠トラッキング・避妊・妊活・卵子凍結・不妊治療・授乳にかかわるもの。妊活の専門家がアドバイスするアプリ「フェミワン」ほか。最新の妊娠判定器や母乳搾乳機なども含まれる。
○更年期や出産による体の変化/更年期症状の改善、骨盤内ケアにかかわるもの。更年期の問題の治療薬は、世界的に注力されている分野のひとつ。
○メディカル/遠隔医療・女性に多いガン検査・治療など。日本では、女性医師にオンライン医療相談ができる「アナムネ」、アメリカでは乳がん発見のためのポータブル3D超音波スキャナーなども商品化。
○セクシャルヘルス/ナイトアイテム・性感染症対策。人に話しにくい月経の悩みや避妊・性生活について、オンラインで相談できるサービスが充実してきている。
○ファッション/つけ心地のいい下着から、ジェンダーレスな装いまで商品群は幅広い。「心身ともに窮屈なものからの解放」を目指すものが多い。
今、国内で注目を集めている「吸水ショーツ」もフェムテックアイテムのひとつ。この開発にいち早く取り組んだ「Bé-A Japan」は、発売時に行ったクラウドファンディングで、1億240万円もの資金を集めたことでも話題に。代表・山本未奈子さんも反響の大きさに驚いたと話します。
「フェムテック事業が活発になった背景には、女性の社会進出や活躍推進が関係していると思います。社会で活躍する女性が増えたことで、彼女たちがライフステージごとに抱える健康課題がフォーカスされるようになりました」
「私も今更年期にさしかかって、これまでの体調とは違うという実感があります」

生理や更年期は「恥ずかしい」?

「女性が更年期を理由に昇進の辞退を検討したというケースは、少なくないと聞きます。大きな理由としては、ホルモンバランスの変化によって起こる不調など、体調に自信がなくなることですが、その裏には、更年期の不調を訴えても理解されない、語ること自体がタブー視されていることもあると思います。
同じことは生理にも言えますね。月経前に起こる体や心の不調であるPMSや月経困難症などは、多くの女性が抱えているにもかかわらず、生理について語ることは恥ずかしいこととされるのも残っているのです。対男性だけではなく、女性同士でも互いの不調を理解し合う、という点でまだまだ課題があると感じます。
日本は、男女格差を数値化したジェンダーギャップ指数においても、世界で156カ国中120位(2021年)。先進国では最下位です。フェムテック事業が欧米に比べて遅れているのは、こういった風潮が一因だと思います」

かつては「生理=隠すもの」

「明治時代、日本では生理中の女性をけがれた存在として扱い、月経小屋に隔離する地域もありました。生理になると、股の部分にゴムを貼ったショーツをはき、脱脂綿をあてていたというのですから、当時の女性たちの不自由な思いやストレスは、相当のものだったはずです。
しかもその風習は第二次世界大戦後まで続き、ようやくナプキンが発売されたのは、1961年。『アンネナプキン』は女性たちから絶大な指示を得て、生理の日は『アンネの日』と呼ばれるくらい、ナプキンの認知は瞬く間に広がったそうです」
「女性が性について語ることは長い間タブーとされてきました」

#MeToo運動で追い風に

それから数十年、サニタリー用品は進化し、今ではタンポンやオーガニックコットンを使ったナプキン、布ナプキン、最近では膣内に入れて使用する月経カップなど幅広く展開されるようになってきました。同時に女性の意識も「生理=恥ずかしいもの」から、「生理=当たり前のもの」と、変化が起きています。
「SNSによって、女性たちが自分たちの健康問題や体の変化、権利について発信したこと、そこに多くの共感が集まったことが変化を加速させたと思います。特に2017年に始まった#MeToo運動は大きかったですね。今まで隠されていた性的被害などの問題に関心や怒りの声が集まり、活発に意見交換が行われたことは、フェムテックの成長を後押ししたと思います」
フェムテック商品のひとつ、超吸収型サニタリーショーツ「Bé-A〈ベア〉」。シンプルなパッケージも好評。

超吸収型サニタリーショーツという新たな「生き方」

テクノロジーの発達とSNSでの女性の発信力が重なり、盛り上がりを見せているフェムテック事業。
「女性たちの意識も、ここ数年でスピーディに変化していて、私たちが開発を始めた3年半前と比べても全然違いますね。この商品も今のタイミングだからこそ、興味をもってもらえたのだと思います。
サニタリー用品は素材や機能性などは進化していますが、ナプキンかタンポンかという選択肢は60年間変化がありませんでした。私は超吸収型サニタリーショーツが、女性にとって新しい選択肢、新しい生き方になると確信しています」
山本未奈子さん/「Bé-A Japan」代表取締役。ロンドン大学卒業後、非常勤講師としてN.Y.の美容学校で教鞭をとる。美容をテーマにした講演や執筆活動を行う美容家としても活躍。2020年、超吸収サニタリーショーツ「Bé-A〈ベア〉」を開発。ブランドのアイコンとなる「ベア シグネチャー ショーツ」は、クラウドファンディングサービスCAMPFIRE(キャンプファイヤー)にて資金調達を行い計45日間で総額1億240万円を達成。発売後、累計5.5万枚を売り上げ、フェムテック事業として注目を集める。
「Vol2 超吸水サニタリーショーツ開発秘話」に続く(8/3公開予定)