[ワシントン 27日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は27日、世界経済見通しの改定で、2021年の世界成長率予想を6%で据え置いた。米国などの先進国の予想を引き上げる一方で、新型コロナウイルス感染拡大が深刻な新興国の予想を引き下げた。

日本の成長率予想は0.5%ポイント引き下げた。今年上半期の新型コロナの感染拡大や行動制限の強化を踏まえた。

見通しの二極化は、主にワクチン調達状況や継続的な財政支援で先進国と途上国で明暗が分かれることを反映する。

IMFのチーフエコノミスト、ギータ・ゴピナート氏は声明で「ワクチン接種を完了した人が、先進国では人口の40%近くであるのに対し、新興国は11%、低所得途上国では一握りにとどまる」と指摘。

「予想より速いワクチン接種ペースと正常化が予想の引き上げにつながった。一方、ワクチン確保が困難で感染が再拡大しているインドなど一部の国については予想を引き下げた」と説明した。

米国の成長率は、2021年が7.0%、22年を4.9%と予想。バイデン大統領が目指す約4兆ドル規模のインフラ・教育・家族支援計画が議会を通過すると想定し、4月の予想からそれぞれ0.5%ポイント、1.4%ポイント上方修正した。

米国の財政出動やワクチン接種が進展するとの見方を踏まえ、22年の世界成長率予想も4月時点から0.5%ポイント引き上げ4.9%とした。

一方、インドの今年の成長率予想は3%ポイント引き下げ9.5%とした。中国については、公共投資や財政支援の減速を理由に予想を0.3%ポイント引き下げ8.1%とした。

新型コロナ感染拡大を受けASEAN5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の予想を引き下げた。低所得国はワクチン配布の遅れから予想を0.4%ポイント下方修正した。

IMFは、世界的になお下方リスクは大きいとし、新型コロナの感染力の強い新たな変異株の出現で再び行動が規制され経済活動が低迷することなどを挙げた。ワクチン接種を受けようとしない人が多ければ新興国、先進国両方に影響を及ぼし、その場合は今年および22年の世界成長率予想をそれぞれ0.8%ポイント押し下げる可能性があると指摘した。

<ダブルパンチ>

インフレ圧力については、経済活動の再開に伴う「需給のミスマッチ」がもたらす一時的な事象で、22年には大半の国でパンデミック前のレンジに戻るとの見方を示した。ただし、インフレ率が高止まりすれば米連邦準備理事会(FRB)など先進国の中央銀行が金融政策見通しを「再評価」する可能性があると指摘した。

先進国中銀が先制措置を取った場合、新興国には「ダブルパンチ」となり、資本流出や金融状況の引き締まりが成長の足かせになると予想した。

さらに深刻な下方リスクとして挙げたのが、米インフラ・社会関連の財政支出計画の縮小。議会で与野党の溝が深いことが背景にある。IMFは、検討されている財政支出計画が今年の米成長率を0.3%ポイント、来年は1.1%ポイント押し上げると試算する。

各国の政策に関する見解を維持し、ワクチンをはじめとする医療、脆弱な家計・企業への支援に向けた支出、教育・訓練、生産性を高めたり低炭素経済への移行を加速するプロジェクトを優先すべきとしている。