[東京 27日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は27日、日本記者クラブで会見し、気候変動は現時点で流動的な問題であり、日銀としては民間金融機関の気候変動対応投融資を後押しすることが効果的と判断したと述べた。その上で、日銀がグリ―ンボンドを優先して購入していくことはしないと語った。

金融政策としてグリーンボンドを積極的に買い入れる「グリーン量的緩和(QE)」について、どのように整理しているかとの質問に答えた。

黒田総裁は、日銀は金融緩和の一環で社債を購入しており、その中にグリーンボンドが出てくれば自然な形で買っていくことになると述べた。ただ、欧州の一部の金融機関が検討しているようにグリーンボンドを優先して買っていくことを日銀はせず、日本の金融システムにおいては民間金融機関の取り組みをバックファインスする形で幅広く支援していくことが有効だと述べた。

日銀は16日に気候変動に関する取り組み方針を公表し、従来からの保有外貨資産に関する方針のもとで外貨建てグリーン国債などの購入を行っていくと表明した。黒田総裁は、運用対象の安全性や流動性、外貨の比率を安定的に維持することになっていると説明。「保有外貨の運用方針を大きく変えてしまうということではない」と述べた。

気候変動以外のさまざまな社会的、経済的な課題への対応については、日銀の使命に沿っているか、金融政策手段が目的のために効果的か検討しなければならないと指摘。「日銀が政策金融機関になるようなことはない」と述べた。

<市場中立性、ある程度幅をもって捉えておく必要>

質疑応答に先立って行われた講演では、気候変動問題は中長期的に経済・物価・金融情勢に極めて大きな影響を及ぼし得るとし、日銀が民間の気候変動への対応を支援していくことは、長い目でみてマクロ経済の安定に貢献するものだとあらためて強調した。

気候変動問題への政策対応は国会・政府が重要な役割を果たすものだが、中銀としても使命に沿って必要な対応を進めることがますます重要となってくると指摘。その際、市場中立性に配慮し、中銀ができるだけ個別具体的な資源配分に入り込まない工夫が必要だと述べた。

中銀がさまざまな金融資産を購入し資金供給をする場合には、マクロ的な金利水準の変動に加え、個々の金融商品の相対価格にも影響を与えることになる、と指摘。そのため、中銀の政策の影響を考える場合、市場中立性については、ある程度、幅をもって捉えておく必要があると述べた。

日銀は民間金融機関が自らの判断に基づいて取り組む気候変動対応の投融資をバックファイナンスする新たな資金供給制度を導入することを決めた。黒田総裁は、この仕組みは、気候変動問題を巡る外部環境が流動的な中、情勢変化に柔軟に対応することができるものだと説明。まずは重要であると考えられる施策を始め、変更が必要であればその時に修正していくという姿勢で臨むことが肝要だと述べた。

(杉山健太郎、和田崇彦 編集:山川薫)