2021/7/23

米紙が開幕日に考える「今後もオリンピックを続けるべき?」

INDEX
  • 幻に終わった「暑さ対策」
  • 世界中で渦巻く「疑念」
  • デメリットがメリットを上回る
  • 「時代に取り残された」イベント
  • 説明責任を果たさない「最高機関」
  • 「テレビ」のためのオリンピック
  • 五輪をむしばむ「3大病巣」
  • 開催都市の悲惨な現実
  • 力を伸ばしつつある「反対勢力」
  • アスリートはどう動くか

幻に終わった「暑さ対策」

2年近く前のある深夜、東京都内最古の寺院であり、観光地としても人気の浅草寺近くに、建築作業員たちが集まった。
通りには誰もおらず、空気は湿っぽく、雨が降らないことを作業員たちは願っていた。重機が音を立てて動き出した。
このささいな出来事は、ほとんど世間の注目を集めなかった。だが、これは同時に、世界最大のスポーツショーを開催するための、時にむなしく、時に滑稽な取り組みの先触れでもあった。
2018年と2019年の7月と8月には、猛暑が原因で1000人以上の日本人が死亡した。東京オリンピックのテストイベントでは、選手らが体調を崩し、スケジュールが混乱した。迫り来るオリンピックを実現させるために、大胆な手段が求められていた。
そのひとつがこのプロジェクトだった。マラソンコースの路面温度の上昇を抑えるため、光を反射するキラキラした舗装を施すのだ。
Hiroko Masuike/The New York Times
何十億ドルもの費用がかかるイベントにとって、この舗装のための支出はわずかなものだった。どれほどの効果をもたらすのか、関係者はあまり確信がなかったが、重機は暑い8月の深夜にシューシューと音を立てながら進み、銀色のストライプのマラソンコースが少しずつ姿を現していった。
その2カ月後、マラソンコースは約800キロ北の札幌に変更された。東京都心部には、残念なアイデアの名残として、蛇行するストライプだけが残された。