[ワシントン 15日 ロイター] - バイデン米大統領とドイツのメルケル首相は15日、ホワイトハウスで会談後に記者会見し、ロシアの侵略から同盟国を守り、中国の反民主主義的な行動と対峙するため協力すると表明した。

一方で、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム2」を巡っては意見の不一致があることを認めた。

共同会見でバイデン氏は「われわれは共に立ち上がり、今後も北大西洋条約機構(NATO)の東側同盟国をロシアの侵略から守るために協力する」と強調した。

また、中国やその他の国が自由で開かれた社会を弱体化させようとした場合、民主主義の原則と普遍的権利のために対峙すると表明した。

メルケル氏は「われわれは皆、同じ価値観、われわれの時代の課題に取り組む同じ決意を共有している」と述べた。

米国とドイツはNATOの同盟国だが、両国関係はトランプ前政権下で悪化した。両首脳は今後、関係強化に取り組むと表明した。

一方、バイデン氏は、ノルドストリーム2の建設計画に改めて懸念を示した。ただ、ロシアは近隣国に対する武器としてエネルギーを利用すべきではないとの考えでメルケル首相と一致していると述べた。

米国はパイプラインが建設されればウクライナに影響が及び、欧州のロシアへのエネルギー依存も高まると懸念している。ロシアがパイプラインを使いウクライナなど東欧の同盟国に打撃を及ぼすことがないようドイツに求めている。

ウクライナを経由しないこのパイプラインは、ウクライナからガス通過料収入を奪うことになるとみられる。パイプラインは9月に完成予定。

両国はコロナワクチンの増産に向けた特許の一時放棄や、米国による欧州からの入国者に対する制限についても立場に隔たりがある。

ただ、両首脳は、トランプ前政権下で揺らいだ同盟関係の修復をアピールした。約1時間に及んだ会談の冒頭でバイデン氏は「米国とドイツの関係は強固で、この状態を続けることを願っており、そうすると確信している」と述べ、メルケル氏を「個人的に素晴らしい友」であり、「米国の友人だ」と語った。

メルケル氏はオーバルオフィス(大統領執務室)で「私はこの友好関係を評価している」と述べ、第2次世界大戦後に自由で民主的なドイツの構築に果たした米国の役割に触れた。1月にバイデン大統領が就任して以来、ホワイトハウスでバイデン氏と会談した欧州の指導者はメルケル氏が初めて。

また、政界から引退するメルケル氏が首相としてホワイトハウスを訪れるのは最後になるとみられ、バイデン氏はメルケル氏の「ドイツと世界に画期的な尽力をするという模範的な人生」を称賛した。

バイデン氏は、欧州から米国に入国するほとんどの外国人に対する渡航制限について、解除できる時期を検討していると述べた。

オバマ政権時に駐ドイツ米大使を務めたジョン・エマーソン氏は、欧州最大の経済大国、NATOの同盟国である役割に加え、ロシアや中東、北アフリカへの対応で橋渡し役としてのドイツの重要性を考慮すると、米政府にとって米独関係は引き続き「不可欠」だと述べた。

ホワイトハウスは両首脳の実務終了後にメルケル氏に敬意を表して祝宴を開催。同氏と夫はバイデン夫妻主催の夕食会に出席した。ゲストには米国の各議員や、コリン・パウエル、ヒラリー・クリントンの両元国務長官、下院および上院の各共和党指導者らが名を連ねた。