米国の薬物過剰摂取による死者数、昨年は過去最多-コロナ禍で悪化
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誤解を招きやすいですが、これは意図しない薬物過剰摂取による死者数の増加によるもので、必ずしも故意の薬物摂取による自殺者数の増加を意味するものではありません。
米国では、コロナ禍の2020年は一部の地域では有色人種の自殺者数が増加しているものの、米国全体では自殺者数はわずかに減少しています。
日本ではあまりお目にかかりませんが、米国では麻薬性鎮痛薬やヘロインなどを含むオピオイドの乱用が以前から深刻な問題です。オピオイドは過剰摂取による死亡のリスクが高い薬物です。
ドラッグ汚染が深刻なニューヨーク市内の大学病院の精神科救急外来でも診療していますが、薬物依存関連の受診者数がコロナ禍で急増したことを実感しています。
一方、コロナ禍に伴ううつや不安などの心理的なストレスとオピオイドの過剰摂取による死亡者増を結びつけるのはいささか短絡的だと思います。オピオイド乱用はコロナ禍以前から深刻な問題で、オピオイド使用障害の患者さんはコロナ禍前から既にオピオイドを乱用していた可能性が高く、コロナ禍に伴う不安やうつを原因として新たにオピオイドに手を出したとは考えにくいです。
死亡者増の背景はむしろ社会的な要因が大きいと思います。意図しない過剰摂取で死亡するリスクが高い重度のオピオイド使用障害の患者さんたちの多くは、コロナ禍前まではオピオイド依存症治療施設を出たり入ったりして暮らしていました。しかし、コロナ感染拡大防止の観点からコロナ禍の最中は薬物依存症治療施設が軒並み閉鎖されてしまいました。そのため、オピオイドの乱用に歯止めが効かなくなってしまった方が多いことは容易に想像できます。さらに、治安の悪化から警察の取り締まりも行き届かなくなり、違法薬物の流通も著しく増加していることも実感します。
注目のコメント
この話は英語のポッドキャストでも聞きましたが、とても深刻だと思います。米国でそもそも薬物過剰摂取による死者がかなり多いことは知られていますが、少しずつ対応していたのが、コロナで逆戻りしているようです。コロナで孤立したり鬱になったりするメンタルヘルスの問題がさらに対応を難しくしていると思うので。
オピオイドについて記事では最後に触れていますが、この薬による弊害は数年前から指摘されたものですね。
一方で若年層の自殺者数の増加は日本でも取り上げられました。元来支援の手に繋がりにくい層へのサポートをどうしていくのかという点で、課題に共通項があると思います。
でも日本もそんな課題はすぐ、忘れ去られていきそうです。