2021/7/15

【新】10年後はAIが代替。データ偏重マーケティングの危うさ

NewsPicks編集部
AI技術の進展で、かねてよりビッグデータの活用が進んでいたマーケティング領域。ここにきてのコロナ禍で顧客接点のデジタル化がますます進み、急速なDXの嵐にさらされていると言われる。
それを裏づけるかのように、世にはデータ活用を主とする新たなマーケティング手法が次々と生まれ、多くのビジネスパーソンが、そのキャッチアップに勤しんでいる。
しかし、この風潮に「待った」を掛けるのが、元エステー宣伝部長として数々のヒットCMを生み出してきた鹿毛康司氏だ。
鹿毛氏の代表作は、同社の「消臭力」シリーズ。ポルトガルの無名の少年「ミゲルくん」を起用し、話題となった。アーティスト・西川貴教さんを起用した一連のシリーズも継続中で、数々の賞も受賞している。
鹿毛氏は大学卒業後、新卒で雪印乳業(現・雪印メグミルク)に入社した。31歳でアメリカにMBA留学し、帰国した直後は「マーケティングのフレームワークを駆使すれば、お客様を意のままに動かせると信じて疑わない、嫌な奴だった」と振り返る。
写真:i-Stock/ipopba
しかしその後、2000年6月に起こった「雪印の食中毒事件」の顧客対応に奔走するなかで、顧客の心という視点が抜け落ちていたことを痛感する。これがマーケターとしての鹿毛氏の大きな転換点となり、エステーでの快進撃につながった。
その気づきと教訓を深く掘り下げたのが、鹿毛氏の新刊『「心」が分かるとモノが売れる』(日経BP)である。
鹿毛氏は、マーケティング思考に基づいた施策は、ある程度の成果にはつながるが、「大ヒット」にはなかなか至らないのが実情だと断じる。
これはなぜか。
鹿毛氏によると、人は、論理的に行動しているつもりでも、無意識の「心」が大きく影響を与え、しばしば不合理な行動を取ることがあるからだ。
マーケティング理論やその手法は、その心を知って、初めて有用なツールになり得るという。
本書では、この「心」を理解し、大ヒットにつなげるマーケティングの本質について解き明かしている。
データマーケティングが花開く今、あえてこの本を上梓した真意について、鹿毛氏に聞いた。