[8日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が8日発表した金融政策の新たな戦略の重要ポイントは以下の通り。

<物価目標>

新戦略は、中期的で対称性を備えた2%の物価上昇率目標を採択している。

ECB理事会は、ユーロ圏の統合消費者物価指数(HICP)が引き続き適切な物価指標だと確認。「理事会は中期的に2%の物価上昇率を目指すことによって物価安定が維持されると考えている。この目標は対称性があり、目標からの上下双方向のかい離は等しく望ましくないことを意味する」と述べ、以前の「2%に近いがそれ未満」という非対称目標を修正したことを明らかにした。

<政策金利が最重要>

「理事会はECBが設定した一連の政策金利が引き続き金融政策手段の筆頭に位置するとも考えている。フォワードガイダンスや資産買い入れ、長期資金供給オペといった他の手段は、過去10年にわたって名目金利が下限に達したことによる政策運営上の制約を和らげる働きをしてくれたし、今後もECBの政策手段の一部として適切に行使される」

<帰属家賃>

「理事会はHICPに帰属家賃関連コストを含めれば、家計の物価動向をより適切に反映することになり、そうした取り組みが複数年のプロジェクトになると認識している。だからその間、理事会は金融政策判断において、幅広い物価指標を補完する目的で帰属家賃コストの当初推計値を盛り込んだ物価指標も考慮に入れる」

<気候変動>

ECBによると、理事会はマクロ経済モデル、統計、金融政策の分野で気候変動に関する分析能力を強化することを強く決意している。

また情報開示、リスク評価、担保受け入れ制度、企業セクター資産の買い入れといった面で政策判断に気候変動の要素を含めていく方針。環境の持続可能性を巡る情報公開と報告義務化問題では、欧州連合(EU)の幅広い政策や取り組みの進展と足並みをそろえる行動計画も実行する。また来年には、ECBとユーロ圏各国の中銀でつくるユーロシステムのバランスシートに関して、気候変動の観点からのストレステスト(健全性審査)を開始するという。

<マクロ経済モデル>

「ECBは新たなモデルの開発を加速し、理論と経験に基づく分析によって気候変動とそれに伴う政策が経済、金融システム、市場と銀行を通じた金融政策の家計や企業への伝達経路に及ぼす影響を見定める」

<統計>

「ECBは、金融機関の二酸化炭素排出量、取り扱うグリーン金融商品および貸出債権の気候変動リスクを網羅するような、実験的な新指標を開発する。来年から逐次こうした指標の強化を開始し、EUが進める環境持続可能性における情報公開と報告義務の政策とも整合性を保つ」

<情報公開>

「ECBは民間セクター資産について、情報開示要件を導入し、新たな適格担保基準、あるいは担保受け入れと資産買い入れで扱いを区別する基準とする。これらの要件はEUの環境持続性情報開示・報告分野の政策に反映され、市場における首尾一貫した情報開示の動きを促進しつつ、中小企業にとっては引き続き応分の負担になるよう調整する。計画の詳細は来年に発表する」