[ワシントン 22日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は22日、米経済は連邦準備理事会(FRB)が景気支援的な金融政策の引き揚げを開始すべき時点に達していないとの見方を示した。ただその時が来れば、FRBは2008─09年の金融危機時と同様のアプローチで、必要に応じて調整すると述べた。

メスター総裁は記者団に対し、市場はFRBが前回にどのような対応をしたか知っているため、FRBは前回の対応を出発点とし、必要に応じて調整すると表明。ただ「現時点では、必ずしもそれほど軌道を外れる必要はないと考えている」と述べた。

これに先立ち、ノルウェー中央銀行が主催した金融政策に関する会合では、各国中央銀行が新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた危機に対応するために導入した低金利政策や債券買い入れ策などが、将来的に金融安定に対するリスクとして台頭する恐れがあるとの考えを示した。

「金融政策枠組みに金融安定への配慮を明確に組み込み、非伝統的な金融政策で金融安定リスクが増大するリスクがあるとの認識を示す必要がある」とし、中銀は金融リスクが高まった時に緩和的な政策を引き揚げられるよう「エスケープ・クローズ(逃避条項)」を用意しておく必要があると指摘。「金融政策の目標達成に向けて導入された措置は、多くの場合は金融安定に補完的な役割を果たすが、時に金融安定リスクを助長させることもあると、金融政策担当者は明確に認識しておかなければならない」と語った。

ただFRBの現行政策にこうしたリスクがあるか、もしくは自身に金融引き締めの用意があるかについては明らかにしなかった。

メスター総裁は中銀による資産買い入れについて、「投資家のリスクに対する感度が低下することで脆弱性が作り出されたり、市場の機能に影響が及ぶことで金融政策の伝達メカニズムにも影響が出たりする可能性がある」と指摘。緩和的な政策を維持すると確約することでレバレッジが積み上がる恐れもあると述べた。

その上で「マクロ経済と金融安定が整合しなくなる時が来ると認識し、金融政策のフォワードガイダンスを発表する際に金融安定に対するリスクも考慮し、金融政策の枠組みをより明確にする必要がある」と語った。

このほか、低金利環境と高リスク選好に対応し銀行資本規制を再調整する必要があるとも指摘。ノンバンクを一段と緊密に監視する必要があるとの考えを示した。