[21日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は21日、米経済は新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた危機から急速に回復しているとしながらも、連邦準備理事会(FRB)が現行の景気支援策の一部を引き揚げるには、一段の進展が必要との認識を示した。

ウィリアムズ総裁はオンライン形式で実施されたイベントで、企業が需要の急増に対応する中、インフレ圧力が増大しているが、経済の安定化に伴い収束すると予想。「経済は明らかに急速に回復しており、中期的な見通しは極めて良好だ」と述べた。

ただ「指標や状況を踏まえると、FRBが景気回復に向け強力な支援を実施する金融政策スタンスをシフトさせるに十分な進展は得られていない」と強調した。

米経済については、ワクチン接種の進展と力強い財政政策を背景に、今年の成長率はインフレ調整後で7%に達する可能性があると予想。経済活動の急速な再開で需給不均衡が拡大し、一時的に物価が上昇しているものの、インフレは次第に収束するとし、インフレ率は2022年と23年には2%近辺と、今年の3%近辺から低下するとの見方を示した。

労働市場については、パンデミック(世界的大流行)前と比べなお700万人の雇用が失われたままになっており、完全な回復には長い道のりが残されていると指摘。雇用は一段と伸びるとしながらも、求人が埋まるまで時間がかかる可能性があると語った。

また、早期退職や転職など労働市場で変化が見られていることで、回復の過程は一様でなくなる可能性があると指摘。学校の対面授業が秋に再開されれば、幼い子どもを持つ人が仕事に復帰できる公算があるほか、失業手当の上乗せによる影響も今後解消していくとし、「完全に回復することを疑ってはいないが、回復過程は一様ではない」と述べた。

総裁はまた、FRBが短期金融市場における資金吸収のための調節手段としているリバースレポ・ファシリティーに記録的な需要が見られていることについて懸念事項ではないとし、同制度が短期金利の下限を設定するという狙い通りに機能しているとの認識を示した。

記者団に対し「これは効果的であり、吸収量についてやそれが今後も増えるかどうかについて懸念していない。計画通りに機能していることを示しているにすぎないだろう」と語った。

FRBは15─16日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、超過準備の付利金利(IOER)と翌日物リバースレポ金利をそれぞれ5ベーシスポイント(bp)引き上げると決定。17日付でIOERは0.15%、翌日物リバースレポ金利は0.05%となった。

これを受け、リバースレポ・ファシリティーの取引額は急増、21日には7650億ドルと過去最高を記録した。

ウィリアムズ総裁は、これらの金利を引き上げたことについて、短期金利の低下圧力が増しているため、フェデラル・ファンド(FF)金利を目標(ゼロ─0.25%)のレンジ内に維持する狙いがあると指摘した。