[東京 18日 ロイター] - 6月のロイター企業調査によると、世界中で相次ぐサイバー攻撃に対して何らかの対策を「講じている」企業は9割に上り、「講じていない」との回答は1割のみだった。ただ、サイバー攻撃を完全に防ぐのは難しいとの声もあり、大半の企業が業績に与える影響について懸念を持っていることが明らかになった。

調査期間は6月3日から14日まで。発送社数は481社、回答社数は230社程度だった。

近年、日本の企業や研究機関、行政機関などがサイバー攻撃を受ける事例が相次いでおり、東芝の子会社、東芝テックの欧州現地法人や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが影響を受けた。米国でも、燃料パイプラインの米コロニアル・パイプラインや食肉大手JBS米国部門などが最近被害にあっている。

こうしたサイバー攻撃の可能性に対し何らかの対策を講じていると回答した企業は90%に上ったが、「対策は行っているが完全回避は無理」(小売)、「講じているが根本的な対策はない」(運輸)といった指摘もあり、苦慮している状況がみえる。「国レベルでの対策が必要」(ゴム)、「国が対策すべきもの」(ガラス・土石)など、政府の対策を求める声もあった。

「サイバーセキュリティーに詳しい人材が不足している」(化学)、「IT人材が不足している」(輸送用機器)といった人材の乏しさを指摘するコメントもあった。

どのような対策を講じているかとの問い(複数回答可)には「ウイルス対策ソフトウエア導入」が91%、「データへのアクセス権限に制限を課す」が74%、「暗号化によるデータ保護」が53%だった。

その他の対策としては「複数メーカーを採用し、多重防御の仕組みにしている」(紙・パルプ)や「グループ会社で構築するファイヤーウォール、グループで定めたセキュリティーガイドラインの遵守 」(輸送用機器)、社員教育の実施などの例が挙げられた。

サイバー攻撃が企業業績に与える影響については、「大いに懸念している」と回答した企業は45%、「ある程度は懸念している」は51%で、9割以上の企業がサイバー攻撃による不利益を被ることに不安を感じている。

<コロナ影響「数カ月先までには終息」、計67%に小幅増>

新型コロナウイルスによる事業への影響を聞いたところ、すでに終息、あるいは遅くとも数カ月先で終息するとの見方が67%となり、3月調査の64%から多少増加した。「終息のめどが立たない」と回答した割合は32%で、3月の36%から減少した。

雇用人数については、今年の年末時点で正規雇用者の数は現在と比べて「変わらない」との見通しを示した企業は81%に上り、多くの企業は変動を見込んでいない。「増加」との回答は13%、「減少」は6%だった。非正規雇用者では「変わらず」が77%、「増加」が13%、「減少」が10%だった。

(金子かおり グラフィック作成:照井裕子 編集:田中志保)