[東京 14日 ロイター] - 東芝<6502.T>の永山治取締役会議長は14日の会見で、「果たさないといけない責任(を全うすること)に集中したい」と述べ、今月の株主総会で諮る役員候補案に自身が残留した理由を説明した。昨年7月の株主総会の運営に問題があったと結論づけた外部弁護士の調査報告書を受け、大株主が永山氏の即時辞任を要求しており、25日の総会では大きな焦点の1つとなる。議決権行使会社はこの日の会見中、同氏の再任に反対票を投じるよう東芝株主に改めて推奨した。

永山氏は「批判を受けていることは承知している。重く受け止めている」としながら、自身の責務は「混乱を収拾し、東芝を企業価値の向上へ導き、株主への還元を実現していく」ことにあると主張した。

東芝は今年初め、昨夏の株主総会について監査委員会が起用した弁護士による社内調査を実施。「不当な干渉に関与したことを認める資料はなかった」などとしていたが、株主に選任された外部弁護士が今月10日に発表した報告書は、それを否定する内容だった。永山氏はこの日の会見で、社内調査について「疑問を感じる必要性を感じなかった」と語った。

永山氏は取締役会議長と指名委員会の委員長を兼務。東芝株7.2%を保有する第2位株主の3Dインベストメント・パートナーズは13日、外部弁護士の報告書を受けて永山氏に辞任を求める書簡を送った。ロイターが閲覧した書簡は「あらゆるコーポレート・ガバナンスの不備について最終的な責任を担っている」と指摘。東芝と同社株主の「利益に反する行為に直接関与した監査委員会委員を再度、取締役候補に任命した」ことを問題視した。

米国の議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は永山氏の会見中、同氏を含む4人の取締役選任に引き続き反対を推奨した

投資家の1人はロイターの取材に対し、「経営陣の監督責任を取るべき人物がいるとすれば、それは永山議長をおいてほかにいない」と指摘。会見で永山氏が、車谷暢昭前社長の責任を強調していたことに触れ、「問題のある人物の再任を含め、すべての重要な意思決定を統括している永山議長が責任を車谷元CEO(最高経営責任者)に転嫁しようとしているのは不誠実」とした。

<監査委候補は「理解得れぬ」と除外、新たな取締役招へいへ>

東芝は13日、調査報告書への対応を協議するために臨時取締役会を開き、当初の取締役選任案を変更し、社外取締役の太田順司氏、山内卓氏を除外することを決めた。両氏とも監査委員会の委員を務めており、永山氏は会見で「株主から再任の理解を得ることが難しい状況に至っていると判断した」と理由を説明した。2人とも退任する。

同じく監査委員会委員だった小林伸行氏は、会社の選任議案に残った。大株主の3Dは小林氏の再任にも異論を唱えているが、永山氏は「監査委委員に日本の公認会計士は必要不可欠で、その資格を持つ小林氏は、監査業務の継続性も考慮して候補にとどめた」と語った。

会社提案の取締役が当初の13人から11人へ減員となったことを受けて、永山氏は今月の株主総会後に改めて臨時株主総会を開き、新たな取締役を招へいする方針を明らかにした。人選には「株主から必要な人材について意見を汲み取り、できる限り反映させたい」という。

<再調査で車谷氏の責任明確化、現在は上場維持が前提>

東芝は外部弁護士の調査報告書が指摘した問題点について、今後あらためて第三者を加えて調査を実施する。永山氏によると、当時社長だった車谷氏の責任を明確にすることも狙いのひとつ。永山氏は「法的責任はさておくとしても、現在の経営の混乱を招き、株主の信頼を損なったことに関する、車谷氏の責任は決して無視できない」と強く批判した。

一部株主が提案した非上場化は、株主から再び提案があれば検討するとしたが、東証1部への再上場で「多くの株主に支えられている。その形態で事業価値を増やすことが十分できるとの前提で考えている」との考えを示した。

(基太村真司 取材協力:山崎牧子 編集:久保信博)

*写真を差し替えました。