わずか17分で…“重症化予測”検査を保険適用
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TARCというのは、もともとはアトピー性皮膚炎の重症度判定で汎用されている『Th2ケモカイン』です。
『Th2ケモカイン』をざっくり説明すると…
ヘルパーT細胞というリンパ球は、大きく『Th1』と『Th2』にわけられ、『Th2』はアレルギーに関与しやすいリンパ球の1群です。
そして、細胞と細胞は、連絡を取り合いながら活動しているのですが、その連絡するための物質を『サイトカイン』と言い、IL-4、IL-13など番号がついています。
サイトカインはすぐ隣の細胞へ情報伝達しますが、サイトカインの一部には、すこし遠くの細胞へ走っていって情報を伝える(遊走する)性質をもったものがあり、これを『ケモカイン』と言います。
つまりTh2ケモカインとは、『アレルギーに関係しているサイトカインでも、走っていって情報伝える伝達物質』ということです。
重症化を予測するTARC値に関し、報道では95pg/mlが目安として示されています。論文化されている先行研究では87.5 pg/mLというカットオフレベルが示されており、重篤化の予測因子として感度91.5%、特異度82.4%と、かなりいい指標といえそうです。
▷Gene 2021; 766:145145.
とはいえ、アトピー性皮膚炎や乾癬があると新型コロナの感染リスクを増加させるという報告があります(オッズ比1.55)。一方、人工呼吸器に至るリスクは減少させるようです(オッズ比 0.22)。ですので、TARCが高値と矛盾はしないと言えるかもしれません。
▷JACI 2021; 147:857-69.e7.
一方で、TARC 95pg/mlは、普段はあまり見ない低値です。小児がもともとTARCが高めということもありますが、成人での検討でも、健常対照が71~848pg/mLという範囲であり、そんなに多い値ではないといえそうです。
▷ J Am Acad Dermatol 2014; 71:1160-6.
TARCが高値であると新型コロナが重篤化しにくい理由は十分にはわかっていないようですが、TARCは小児のほうが高値であるため重篤になりにくい理由の一つかもしれないと考察されています。
また、報道では17分で結果が判明する…とされていましたが、一般的には外注検査になるので1~数日はかかるのではと思います。