2021/6/12

【命運】日本が「アンモニア」に賭ける理由

世界が「脱炭素」に向かう中で、日本に残された技術は少ない。
脱石炭が世界を覆い尽くすなかで高効率の石炭火力の輸出はもはや困難で、CO2の面ではメリットがある原発も輸出案件はなくなり、太陽光発電は中国メーカーの独壇場。風力にいたっては日本からメーカーは消え去った。
そんな厳しい状況で、日本が新たに賭けるのが「アンモニア」だ。
そう、あの臭いアンモニアである。アンモニアは化学式がNH3で燃焼しても、CO2が出ないことから、脱炭素の「切り札」になり得る可能性を秘めているのだ。分子内に水素を含んでいることから、注目されている水素の活用にもつなげられる可能性がある。
6月に入り、すでに日本最大の火力会社JERA(ジェラ)が、このアンモニアを火力発電に用いる実証実験を始めた。日本の火力発電の半分を担うJERAだが、日本のエネルギー業界ではいち早く「2050年までのカーボンニュートラル」を宣言しており、その切り札の一つにアンモニアを位置づける。
既存の石炭火力に徐々にアンモニアを混ぜ、最終的にはアンモニアだけを燃やしてCO2排出をゼロにする「ゼロ・エミッション火力」を2050年までに実現するというのだ。
「火力でありながら、排出ゼロ」。ある意味で矛盾をはらんだこの計画は、本当に日本を救い得るのか。なぜ、アンモニアは日本だけで注目されるのか。NewsPicks編集部は、JERAの副社長奥田久栄氏を直撃し、すべてを聞いた。
INDEX
  • CO2を出さない火力
  • 日本の「職人技」が生きる
  • アジアはアンモニアが合う
  • 日本に残された「ナンバー1」
  • 脱炭素は「儲かる」

CO2を出さない火力

──政府は2030年までに温室効果ガスを46%削減する目標を打ち出しました。これは日本の火力会社にとっては厳しい状況ですね。
奥田 ピンチではなく、むしろチャンスと捉えています。