(ブルームバーグ): 世界的な超低金利で厳しい運用環境が続く中、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は新たに長期分散投資の枠を設定する。投資対象にはプライベートエクイティー(PE、未公開株)や不動産投資信託(REIT)などのオルタナティブ資産も含め、3年間で1兆円の運用資産残高を目指す。

「新機軸投資」との位置付けで4月に市場事業本部内にポートフォリオ運用室を設置した。傘下の銀行や信託銀行から、国債や株式投資の経験を持つ人材、オルタナティブ投資の知見を持つ人材を計7人集めた。今夏にも投資を始める方針。将来的には陣容拡大や外部からの採用も検討する。室長を務める根本佳明氏がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。

銀行の預貸バランスは預金残高が貸出残高を大幅に上回る預超構造が加速し、有価証券運用への圧力が高まっている。これまではグループ全体のバランスシートを前提に資産と負債の総合管理を行う必要があり、PEなど投資期間が長期にわたるものは手掛けにくかった。

MUFGが打ち出す新機軸投資では、従来とは別の新たな運用枠組みを設けることでより機動的な投資を可能にする。根本室長は「徹底的に資産や時間の分散を図りながら安定的な収益を出し、ROE(自己資本利益率)維持も狙える中長期の分散ポートフォリオ運営を考えている」と述べた。

米調査会社モーニングスターのアナリスト、マイケル・マクダッド氏は、低金利下での新たな取り組みを評価しながらも、「リスクアセットへの影響がどの程度になるかが気になる」とコメント。また、預金残高が貸出金残高を上回る構造が定着した国内銀行では、投資や運用面などの資産サイドだけでなく、バランスシート全体の最適化なども合わせて検討することが望ましいと指摘した。

根本氏は「銀行としてデューデリジェンス(価値やリスクの調査)をしながらリスク管理体制を整備していく」と説明。投資基準に合った商品を見いだすことや体制整備は簡単ではないとしながらも、低金利環境下での新しい枠組みは、投資環境が変わってもグループの収益に貢献できるとの見通しを示した。

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