2021/6/11

【核心】「インチキ」なエネルギー政策と、決別せよ

NewsPicks編集部
菅政権がカーボンニュートラルを掲げたことで、日本のエネルギー戦略は大変革を迫られている。

再エネ、原子力、火力発電。それぞれが菅政権の大号令の中で揺れ動いているが、中でも今後の見通しが最も不透明なのは、実は原子力ではないだろうか。

国は2030年度の電源構成において、原子力の比率を20〜22%としている。だが実は、まだこの水準まで原発を稼働させる見通しは立っていない。

今夏、国は新しいエネルギー基本計画をまとめる。日本の将来にわたる電力のエネルギー政策の根幹をなす計画だけに、原発の積極的な活用から再エネの急拡大まで、あらゆる要望が挙がっている。

電力が「激変期」に突入した今、日本が取るべき戦略とは何なのか。

日本のエネルギー政策に深く関与してきた、国際大学の橘川武郎副学長の寄稿をお届けする。

「2030年46%減」は難しい

菅政権が2030年の温室効果ガスの削減目標を2013年度比で46%削減という目標を打ち出しました。ようやく正しい目標が設定されたと私は評価しています。
気候変動で一周遅れだった日本が、昨年の「2050年カーボンニュートラル」宣言と、今回の46%で、グローバルスタンダードに復帰しました。
しかし、これは世界の中では一周遅れのスタートなので、日本はどんなに急いでも2030年の時点ではゴールを達成できません。
それは従来のエネルギーミックス(電源構成)が悪いからです。過去の悪政のツケで、2030年46%削減という目標を達成できないということです。
そしてこの目標と現実との乖離(かいり)が生じるために、電力の安定供給に問題が生じる恐れがあります。
この問題をまず見ていきます。