着物、能、和食、禅、いけばな…文化を京都で体感し、思いを未来へ繋ごう

2021/6/11
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の人の⽇常の働き⽅・過ごし⽅・⽣き⽅へ影響を与え、豊かさとは何か?という⼈々の根本的な価値観も変えつつあります。
当⾯は収束しないという⾒通しもある中、いま求められているのは「with/ポストコロナ時代」を⾒据えた「豊かさの再定義」ではないでしょうか。
そこでNewsPicksは、京都発の文化・アートの新サービス「THE KYOTO」と連携し、「日本文化 BOOT CAMP in KYOTO」というプロジェクトを立ち上げます。
本プロジェクトは事前の2回のプログラムと、2日間の京都での実地プログラムで構成。
開講に先立ち、NewSchoolではオンライン説明会を開催。その内容をハイライトしてお伝えします。

未来の伝統を創る

今回ナビゲーターを務める、THE KYOTO編集長の各務亮と申します。
私は2002年から中国、シンガポール、インドなど10年の海外勤務を経て、2012年に京都へ移り住み、今年で10年目になります。
京都の美しい文化に触れ、文化を日本が誇る価値として世界へ発信していきたいと、工芸や芸能などの伝統に異分野を掛け合わせ現代的なプロダクト、サービス、事業を生み出すことに取り組んでいます。
例えば、伝統工芸の後継者6人と工芸の新しい可能性を探究する「GO ON」、夜の太秦映画村を、ライブで時代劇をみるエンターテインメントの場に変身させる「太秦江戸酒場」といったプロジェクトをお手伝いしてきました。
現在は、日本の文化を次世代へ継承するため、グローバルな文化・アートのコミュニテイを生み出したいと、「THE KYOTO」というプラットフォームを京都新聞社と共に立ち上げ、1200年の京都の叡智を探究、発信しております。
THE KYOTOは、毎日、お手元のアプリへ京都のインスピレーションをお届けするサービスですが、情報を知るだけではなく、実際に人に出会う、そしてプロジェクトを実践していくという、「知る」「出会う」「育てる」の3本柱で未来の伝統を創ることを目指し活動しています。
今回は、日本最高峰の文化人のお稽古を京都で体験頂き、日本文化の真髄に触れて頂く、そして未来の伝統を生み出していただくべく「日本文化 BOOT CAMP in KYOTO」をご準備させて頂きました。
講師は、伝統の各分野におけるトップリーダーです。NewsPicks Studiosとともに制作してきた番組「JAPAN MASTER CLASS」に出演くださった講師が、日本文化の継承のため、と意義に賛同くださり実現しました。
今、グローバルで活動するビジネスリーダーや、アートやファッション、デザインといったクリエイティブ領域に携わる方は、足元にある日本文化の重要さを再認識されているのではないでしょうか。
また従来の常識や価値観が通用しない時代、最高峰の文化人との交流を通して、自分らしく美しく生きていくための思想や哲学を、ぜひ磨いて頂きたいと考えています。
2日間の京都での現地プログラムから、今後のビジネスへのヒントを得るのはもちろんのこと、そこでの人との出会いやつながりは生涯にわたる大きな財産になると信じております。
実際に京都でプログラムに参加頂くのは、7月10日、11日の2日間です。
(※緊急事態宣言の発令により当初のプログラムから日程及び一部内容が変更されております)
また事前プログラムとして、6月29日には、各文化の概要や魅力、精神性、課題を共有するべく、講師からのオンラインのオリエンテーションも準備しています。
さらに6/20には、NewsPicks GINZAにて東京お稽古も予定しています。
講師は、能楽シテ方五流の一つで、現在、唯一京都に家元がある金剛流の若宗家、金剛龍謹さんです。金剛流の二十六世の長男として生まれ、能の魅力を現代に伝える様々な取り組みを推進されていらっしゃいます。
当日は、JAPAN MASTER CLASS番組内と同じ「羽衣」の謡を参加者にお稽古頂く予定です。

西陣織の革新に触れる

京都での1日目となる7月10日は13時30分から21時まで、2日目の7月11日は朝8時から15時までと、きもの、お能、和食、京舞、禅、いけばなと、あらゆる分野の日本文化の最高峰に浸っていただきます。
そして最後は、実際に体得した学びを活かしたアイデアを、ゲストへプレゼンテーションし、日本文化のアップデートを実践へつなげていければと考えております。
初日は、西陣織「細尾」12代目の細尾真孝さんを講師に、プログラムをスタートさせます。
細尾さんは、着物や染織の伝統を現在進行形で革新されている方です。
音楽活動を経て大手ジュエリーメーカーに入社し、退社後はイタリアのフィレンツェに留学するなど、様々な分野で経験を積まれてきました。
約10年前に家業に戻られてから、帯の技術や素材をベースにした織物を海外向けに展開し、クリスチャンディオールやシャネルといったラグジュアリーブランドにも採用されています。まさに日本の技術や美意識をそのまま、数多くの分野に転用して活躍されています。
細尾真孝さんは、昨年、コロナ禍の難しい状況の中で12代目社長に就任し、京都の老舗の舵取りを担っていらっしゃいますが、そんな中でも先日3月には、日本発の価値の発信により新時代に求められる“感動体験”を届けることを理念としている、Japan's Authentic Luxury(JAXURY)の「JAXURY アワード」で、並み居る国内ブランドを抑えて大賞を受賞しました。
まさに今、注目されている日本のニューラグジュアリーを体現されている企業です。
そんな細尾さんから、350年続く老舗の経営哲学を学んでいきます。
“伝統は革新の連続”と言われる老舗の現在進行形の思想を、お話頂く予定です。
実際「細尾」は工芸を革新する拠点として、昨年には本社ビルを現代的な工芸建築としてリノベーションしています。当日は本社1階のショップ、2階のギャラリー、3階のサロン、4階のスペースとその異なる機能を巡るツアーを行いながら、西陣織の革新に触れていきます。
Photo: Mitsuru Wakabayashi
さらに、「細尾」は、いかに着物を次世代の方にも親しんで頂けるかという取り組みも推進されています。そこで参加者みなさなには「細尾」の会員制着物サロンへご案内し、着物の選び方、着方、楽しみ方についても学んで頂きます。
「どう選べばいいのか」「そもそもどこで買ったらいいのか」という素朴な疑問を細尾さんから直接お伺いしていきます、日常で着物を楽しむための第一歩になればと考えています。
Photo: Mitsuru Wakabayashi

体を使って謡ってみる

その後は、東福寺光明院へ会場をうつし、謡のお稽古と発表会を頂く予定です。
講師は、金剛流能楽師の方に担当いただきます。
開催場所となる東福寺光明院は、名作庭家である重森三玲が手がけた枯山水で知られる美しい塔頭です。
Photo: Mitsuru Wakabayashi
6月の金剛龍謹さんのお稽古の成果を、宇宙を感じる名庭園に向けて存分に発揮いただければと思っています。
実際に、体を使って謡ってみることで、日本の芸能の美意識を身体感覚を通じて吸収いただきたいと考えています。
そして、夜は同じく東福寺光明院で、幽玄な時間をお楽しみ頂きます。
ミシュラン一つ星、京料理の次代をリードされる「木乃婦」三代目ご主人の高橋拓児さんのお話をききながら、お料理を召し上がっていただきます。
高橋さんは京都大学大学院の農学研究修士課程を修了し、フランス料理や分子化学の理論など最新の技法を取り入れ、新しいスタイルの日本料理を追及しています。まさに和食の可能性を探究されている方ですので、食事を味わうだけでなく、京料理の本質や革新の話も聞いていきたいと考えています。
また京都祇園甲部で活躍する芸妓さんの槇子さんをお招きし、美しい京舞もご覧頂きます。
槇子さんは2004年に五世井上八千代に入門し、2019年に井上流名取りとなり、東京国立劇場「京舞」公演でお披露目。政財界にもファンが多い人気芸妓さんです。
舞妓さん、地方さんと共に祇園小唄の他、夏らしい芸をお披露目頂く予定です。
夜間のお寺で、美しい庭に囲まれ、京料理に舌鼓を打ち、お座敷の風情を楽しむ。
忘れられない夜をお過ごし頂きたく思っております。

禅とウェルビーイング

2日目は、朝の京都も満喫頂きたく8時開始となっています。まずは「禅」をテーマに、建仁寺両足院で副住職の伊藤東凌さんを講師に迎え、坐禅体験から禅とウェルビーイングについて学んでいきます。
Photo: 両足院
伊藤東凌さんは禅を日常に取り入れるアプリ「In Trip」を立ち上げるなど、禅を革新する様々なプロジェクトを推進されています。みなさまとの対話も、きっと盛り上がるのではないかと楽しみです。
開催場所となる建仁寺両足院は、普段は一般非公開の塔頭です。
静かな早朝に坐禅を組み、ゆっくりとした時の流れと自然に身を任せることで、あとに続くプログラムもより一層実り多きものになるのではないでしょうか。

いけばなの奥深い世界

坐禅で心身をリセットした後は、10時から12時にかけて、池坊専好さんから「いけばな」のお稽古を通し、いのちを活かす日本人の精神性と美意識を体得していきます。
Photo: Mitsuru Wakabayashi
講師の池坊専好さんは、小野妹子を道祖とし、現代でも最大の門弟数を誇る最古の華道家元である池坊の次期家元でいらっしゃいます。
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の文化・教育委員会委員や、大阪・関西万博の理事・シニアアドバイザーも務めていらっしゃいます。
場所は、聖徳太子が建立したと言われる六角堂(紫雲山頂法寺)に隣接した池坊会館です。仏に供えるお花が洗練されて生まれた伝統芸能であるいけばなは、日本人の心とも言える精神性はもちろんですが、そこに現代のデザイン思考や経営の組織論にも通ずる点があると言います。
実際に、お花を活けながら、いけばなの奥深い世界を学んでいきたいと思っています。

日本文化をアップデートしていく

そして、何かを世の中に出していくという真剣さからこそ、真のインプットは生まれてくるはずです。
プログラムの最後には、参加者にアウトプットの機会を用意させて頂いており「日本文化のアップデート」というお題で、プレゼンテーション頂きます。
内容としては、「西陣織/着物」「能/謡」「和食/芸舞妓」「禅」「いけばな」といった2日間にわたって学んだ各テーマはもちろん、日本文化全体にも挑戦頂ければと思っております。
今回のプレゼンには、「まちづくりのためにも、ぜひ皆さまのお知恵をお借りしたい」とのことで、講評者として京都市の門川大作市長も出席頂きます。
さらに、京都側からだけでなく、外部の目線からも評価いただくべく、東京で伝統文化のアップデートをリードしている茶道家の岩本宗涼さんと、NewsPicks NewSchool校長の佐々木紀彦さん、私の3人も講評に加わります。
プレゼンの内容次第では、登壇する面々はもちろんのこと、各テーマのゲスト講師と今後ビジネスを進めていく可能性もあります。各分野の課題とプレゼンがうまく交わった際は、私もぜひお膳立てさせて頂きたいと考えています。
「THE KYOTO」ではメディア発信だけではなく、「知る」「出会う」「育てる」を3本柱にしており、本イベントは、その中の「出会う」にあたります。
そして出会いの中から生まれたアイデアを社会実装していくために、オリジナルのクラウドファンディングプラットフォームも持っています。
私やTHE KYOTOとしても、プレゼンで生まれたアイデアを形にしていくこと、実践していくことに少しでもお役に立てればと思っています。
今回のプログラムでは、一方的に講義を受けて頂くだけでなく、そこから社会に価値を生んでいく、日本文化をアップデートしていくことまで目指していきたいと思います。
簡単なことではありませんが、みなさんのチャレンジ精神があればきっと何か生まれると思います。
実際に、ここまで網羅的に日本文化に触れて、体験できる機会は希有だと思います。
そんなプログラムを一層、充実した時間にいただくべく、事前の予習プログラムも準備しています。
例えば、予習本の参考として、「THE KYOTO」で、京都の文化人を中心としたフェローに、美意識や哲学を磨くおすすめの1冊を紹介する記事もご覧いただければと思います。
日本文化の名著が多数ある中で、フェローが選んだ本が、必ずしも日本文化に直接関わる本でなく、外の領域からインスピレーションを得て、自らの道を深めていらっしゃることは面白いです。
今回のプログラムは、興味を持って参加くださる情熱が何よりの参加資格です。
そんな熱量を持った参加者と講師が交わり、伝統に化学反応が起こることを期待しています。
今回は若宗家、次期家元といった次代をリードする後継者が中心になって、講師を下さいます。伝統というと「変わらないもの」の印象が強いですが、一方で何百年と続いてきた伝統の後継者である方々は「50年後、100年後の仕事を創ることも自分の役割だ」と仰います。
明日の仕事や、せいぜい3年後の仕事に追われがちな自分には目鱗の視点でした。
今回、講師みなさまが特別にお稽古をくださるのも、異分野の才能との交流が、きっと50年後100年後の仕事をつくることにつながるのではないか、と感じているからと思います。
参加者のみなさまにとっては、そんな文化の継承者の生の声を聞き、身体性を通じ日本文化を学び、歴史に残る仕事を生み出す、そんなきっかけになればと願っています。
もちろん、新型コロナウイルス対策は万全を期して準備しております。
伝統の未来を共に創る皆様を、京都でお待ちしております。
(構成:小谷紘友)
日本文化 BOOT CAMP in KYOTO」は、事前の2回のプログラム(6月20日、29日実施)と、2日間の京都での実地プログラムで(7月10日、11日実施)にて構成。プロジェクトの詳細はこちらをご覧ください。