[ワシントン 1日 ロイター] - 米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事は1日、米国はFRBが掲げる完全雇用と2%の物価目標に向けて進展しているが、依然として根深い問題があり、FRBは早まって金融引き締めを開始すべきではないとの考えを示した。

ニューヨークのエコノミッククラブでの講演で「われわれは歓迎すべき進展を目の当たりにしており、今後数カ月間でさらなる進展が見られることを期待している」と指摘。ただ、「パンデミック(世界的大流行)が発生しなかった場合と比較して、雇用は800万─1000万人減少している。また、インフレについても(一時的な上昇ではなく)持続的な進展を確認することが重要だ」とした。

財政支出や広範な経済再開の恩恵を享受する家計の動きが現在の力強い成長を支えているが、その一部は時間の経過とともに薄れていく可能性が高いとし、これがFRBが早々に金融引き締めに動くべきでないもう一つの理由とした。

また「一時的な経済再開が起こる中で、結果に基づいたアプローチを堅持することが、必要な経済モメンタムの確保に役立つ」とし、これによりFRBの物価目標の達成・維持を確実にし、国民は復職や就職に可能な限り多くの時間を割けるようになるとした。

インフレに関しては、予想外の半導体不足や中古車購入需要の高まりなどが一因になっており、ブレイナード氏はこうした経済指標の「ノイズ」の一部は今秋までに緩和されると想定。インフレ高進の兆候に「注意を払う」としながらも、国民の雇用を奪いかねない「先走った引き締め」には警鐘を鳴らした。

ブレイナード氏はこれまで、景気回復が腰折れしないよう政策変更を待つべきとの主張を繰り返しているが、この日はFRBの態度について、政策変更の先送りを意味する「忍耐強い(patient)」という文言を用いず、代わりに「着実(steady)」と表現した。

JPモルガンのエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「着実ということは、あまり動揺しておらず、わずかながら再調整する意思もうかがえる」と指摘。さらに「着実」という言葉は「忍耐強い」という言葉よりも潜在的な政策調整までの期間が短いことを示唆していると分析した。

ブレイナード氏はFRBによる住宅ローン担保証券(MBS)の購入について、財務省証券の購入と「同様」の効果を長期金利にもたらしており、景気支援に向けた広範な取り組みの一環だと説明。住宅市場が好調なときにFRBはMBSを購入すべきかとの質問に、財務省証券800億ドルとMBS400億ドルを毎月購入することは金利を抑制し、市場に確実性を与えるためのもので、この配分が「効果的」だと強調した。

前出のフェローリ氏はブレイナード氏の発言について、量的緩和を縮小する際、財務省証券よりも速いペースでMBSの買い入れを減らすことに消極的な考えかもしれないと述べた。