(ブルームバーグ): スイスの銀行クレディ・スイス・グループはトップバンカーの競合他社への流出阻止や思い切ったリスク圧縮に取り組んでいる。アントニオ・ホルタオソリオ新会長は一連の不祥事からの立ち直りを模索している。

クレディ・スイスはソフトバンクグループとの関係を断ち切る。破綻した英グリーンシル・キャピタルのサプライチェーンファイナンス(SCF)ファンド問題を受け、グリーンシルの主要な支援者であるソフトバンクGと距離を置く。

また、グリーンシル問題に加えファミリーオフィスのアルケゴス・キャピタル・マネジメントのポジション破綻に伴う損失も響き退職者が増える中、成績優秀な人材を引き留めるための遺留ボーナスを検討している。 

資本市場コンサルティング会社オピマスのオクタビオ・マレンツィ最高経営責任者(CEO)は28日の電話インタビューで、クレディ・スイスは「今、弱者だ。アルケゴスはひどいことだった。このような事件の後には同業者から狙われる。クラスで一番弱い子供のようなものだ」と話した。

ソフトバンクG

事情について知る複数の関係者によれば、クレディ・スイスは今後ソフトバンクGと新たなビジネスを行わない。関係者らは、情報が非公開だとして匿名を条件に語った。この決定は、クレディ・スイスの投資銀行事業全般に影響を与える可能性がある。ソフトバンクGは数多くの案件を手掛けるディールメーカーだ。また昨年には、クレディ・スイスなど複数の金融機関が孫正義社長が担保として差し入れた合計約80億ドル(約8800億円)相当の株式を保有していた。

孫正義氏、保有するソフトバンク株の40%相当を融資の担保に

ソフトバンクGの東京在勤の広報担当者はコメントを控えると述べた。クレディ・スイスもコメントをしなかった。

グプタ氏

グリーンシルについては、グリーンシル・キャピタルのSCFファンドを通じてクレディ・スイスが顧客資金を投じていたサンジーブ・グプタ氏の事業について、行内からの警告を幹部が無視していたという関係者の話が明らかになっている。

クレディ・スイスの広報担当、ウィル・ボ―エン氏は電子メールで、「現在は投資家の資金の回収に集中している」と説明した上で、内部調査は問題のファンドに関連する「全て」を対象としているとし、同行が学んだ教訓は適切な時点で共有すると付け加えた。

ルネサンスとのファンド

また、クレディ・スイスはルネサンス・テクノロジーズと共同で手掛けるファンドの顧客に対し、投資資金の全額償還を一時停止する。同ファンドはリターンが大幅なマイナスとなり、投資家の資金引き揚げに見舞われている。

事情に詳しい複数の関係者によれば、クレディ・スイスは資金の償還を停止する条項を発動した。CSルネサンス・オルタナティブ・アクセス・ファンドの運用資産は2020年初めの約7億ドル(約770億円)から、今月には約2億5000万ドルに減ったという。投資家らは2カ月後に償還請求分の95%を受け取るが、残りの5%についてはファンドが年末監査を終えた来年1月になるという。

クレディ・スイスとルネサンスはコメントを控えた。

原題:Credit Suisse Cuts Risk as Defections Mount in Wake of Scandals、Credit Suisse Cuts Ties With SoftBank After Greensill Crisis(抜粋)

(ソフトバンクGのコメントを追記して記事を更新します)

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