[ワシントン 26日 ロイター] - 米大手金融機関の経営トップは26日、上院銀行委員会の公聴会で証言を行い、全般的な経済や役員報酬のほか、気候変動や人種差別に至る広範な問題について、議員らの厳しい質問に回答した。

公聴会に出席したのは、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの最高経営責任者(CEO)。

民主党進歩派のエリザベス・ウォーレン上院議員はこの中で、国内最大手銀行JPモルガンのジェイミー・​ダイモンCEOを攻撃。新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン(都市封鎖)で借り手が家計のやり繰りに苦慮していたにもかかわらず、同行が2020年にオーバードラフト(当座貸越​)手数料で14億6000万ドルを得ていたことを問題視した。

ウォーレン氏は、連邦機関や議会が各行の資本維持のため規制面の優遇を講じていた中でこうした手数料を得ていたことは特にひどいと指摘。JPモルガンは競合相手よりも多くのオーバードラフト手数料を集めていた、と述べた。

同氏は「あなたやあなたの仲間は本日、パンデミック(世界的大流行)中にいかに顧客支援を強化したかについて話すためにお越しになった。でたらめもいいところだ」と語った。

これに対してダイモンCEOは、求めのあった顧客にはオーバードラフト手数料を適用しなかったと説明。ウォーレン氏が手数料を払い戻すかと質問したのに対しては、きっぱりと「ノー」と答えた。

JPモルガンの広報担当者は公聴会の後、ロイターに電子メールで、2020年に100万以上の預金口座に対して「無条件で」オーバードラフト手数料を含む手数料を適用しなかったとの回答を寄せた。

公聴会ではJPモルガンのほか、BofA、シティグループ、Wファーゴの各CEOもオーバードラフト手数料についてウォーレン氏から追及を受けた。同氏によると、4行は昨年、こうした手数料を合計で40億ドル集めた。

ウォーレン氏の怒りの矛先は、リテール事業の規模が比較的小さいゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの両CEOにはおおむね向かわなかった。

ウォーレン氏は公聴会の後、CNBCに対し、各行は「利益を膨らませる」ためにパンデミックを利用したと指摘した。

消費者金融サービスを手掛けるバンクレートによると、当座預金口座の借り越しコストは2020年に過去最高となり、平均で33.47ドルに上昇した。

各行はオーバードラフト(預金者から見た当座借越)は顧客にとって重要なクレジットの源だとする一方、消費者団体は手数料が不当に高いと指摘している。

コーエン・ワシントン・リサーチ・グループのアナリスト、ジャレット・セイバーグ氏は「今回のやり取りは消費者金融保護局(CFPB)がオーバードラフト手数料への制限強化を検討するとの見方を強めるだけだとわれわれは考えている」と述べた。

<両党から厳しい質問>

銀行トップが議会で証言するのは新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年3月以来初めて。大手金融機関はコロナ禍で苦戦する85万社の支援に690億ドルを拠出するなどしたことから、CEOらは穏やかな公聴会を予想していたが、実際は民主党と共和党双方から厳しい質問が浴びせられた。

公聴会の冒頭で、JPモルガンのダイモンCEOは「われわれは力強いポジションでこの危機を迎え、米国の安定と実体経済に対する支援に、われわれの規模をもって貢献した」と表明。シティグループのフレーザーCEOは、人種差別や富の不平等分配を含む「システミックな不平等」への対応を推し進める必要があるとの認識を示した。

これに対し、銀行委のシェロッド・ブラウン委員長(民主党)は、大手金融機関がパンデミックをうまく乗り切ったことだけでは十分でないと指摘。「現行のシステムの下では、大手金融機関の利益は従業員を代償にしているため、従業員に何が起ころうと利益を上げられる仕組みになっている」とし、CEOが受け取っている巨額の報酬のほか、株式買い戻しなどについて正当化するよう求めた。

共和党議員は、大手金融機関が化石燃料関連企業や銃製造メーカーに対する融資を制限するなど、社会政策に関与しようとしていると批判した。