2021/6/1

ナニモノでもないビジネスパーソンが、武器を持つ方法

NewsPicks ブランドデザイン シニアエディター
「読書をしたいけれどまとまった時間がない」「本を読んで得たはずの知識が、右から左に抜けていく」「読みたい本が多くて、読んでいない本が溜まっていく」――。
 そんな課題を持つ人は少なくないだろう。しかし、ビジネスパーソンにとって読書による知識の獲得が、新たな発見を生むツールとして有効なのは説明するまでもない。
 いまだ紙の本を手にしている方も多いかと思うが、昨今の電子書籍デバイスのUXは進化が目覚ましく、我々の知らないところで進歩を遂げている。
 特にKindle電子書籍リーダーの最上位モデルKindle Oasisは、Kindle Paperwhiteと比較し、反応速度が劇的に向上。独自のページ送りボタンや色調調節ライトなど、快適な読書をするための機能がそろっている。
 どうすれば効果的に電子書籍で読書ができ、自らの血肉とできるのか。学びのプロである学びデザイン代表の荒木博行氏に、ビジネスパーソンにとって実益となる読書法について、話を伺った。
INDEX
  • もともとは、読書家ではなかった
  • 人は「前提を疑えない」生き物である
  • 読書は、10分の隙間時間を活用する
  • 読書は、読後のアクションが重要
  • 一昔前とは変わったKindle Oasisの電子書籍体験

もともとは、読書家ではなかった

──ビジネス書から哲学書まで幅広く読まれている荒木さんですが、そもそも読書家になるきっかけはなんだったのでしょうか?
荒木 もともと私は、他者と比較してもそれほど本が好きなタイプではありませんでした。
 きっかけは、ビジネススクールで教員として人前で話す機会が増えたことです。必要に迫られて本を読むようになりました。
 当時、20代後半だった私が、自分より年上で経験豊富な人たちの講師をしなければいけなかったのですが、そんな人たちへ力強いメッセージを伝えるには、他者の力が必要だと気づいたんです。
──コミュニケーションのツールとして、書籍が有効だったのですね。
 その通りです。当時の私にとって、他者の言葉、つまり書籍から他者の経験を引用し、自分のメッセージに乗せていくということは、非常に有効なコミュニケーションの武器になりました。
 たとえば、情報が不十分な中、「意思決定をどのタイミングですべきか」ということで悩まれている経営者を目の前にしたとしましょう。
 そんなとき、たとえば『孫正義 リーダーのための意思決定の極意』(光文社)という書籍から、孫さんの「7割以上勝つという見込みを得るまでは、徹底的に理詰めで考える」という引用を、自分の考えに添えて伝えた方がグッと飲み込みやすくなりますよね。
 目の前の人が悩んでいるときに、未熟な自分がいかに力を与えることができるか、という場面に数多く直面した結果、「最適な書籍のキュレーション」が武器になることに気づいたのです。本当の読書家になったのは、それからですね。

人は「前提を疑えない」生き物である

──インターネットに情報があふれている今、荒木さんが実感している、読書の本質的な価値とは何でしょうか?
 書籍には3つのカテゴリーがあると思います。
 1つ目が、今までにない「問い」を与えてくれる本。
 2つ目が、既存の「問い」に新たな「答え」を与えてくれる本。そして3つ目が、既存の「問い」に既存の「答え」を与えてくれる本です。
 3つ目のカテゴリーの本は、読書として一番負荷がかかりません。既存の正解を確認し、後押ししてくれるものですから、さっと読めてしまいますよね。
 ただ、この3つ目のカテゴリーの読書だけを続けるのは、とてももったいないことだと思います。なぜならば、ビジネスパーソンにとって読書の本質的な価値とは、「前提を疑う」ということにあるからだと考えているからです。
──前提を疑う、ですか?
 はい。よく「前提を疑え」と言われますが、そんなに簡単なことではありません。
 生活もビジネスも、無意識に重ねた前提の上に成り立っていますよね。個々人によって前提も違う上に、ビジネスシーンでは、その重ねた前提の中に怪しい前提が紛れ込んでいるケースがよくあります。まるで抜いてしまうとガラガラと崩れてしまうジェンガのピース。
 しかし、そんな危うい前提の存在に最初のうちは気づいていても、その上にいろいろな前提を積み重ねていくと、やがてはその危ういピースが見えなくなっていくのです。
 結果、足元がグラグラになっているのですが、足元がグラグラの土台の上に立っている人たち同士では、その不安定さには気づけません。
 たとえば、コロナによって、私たちのビジネスが「移動できる」とか「集合できる」という暗黙の大前提に成り立っていたことに気づくわけです。「移動」とか「集合」というのは当たり前すぎて、コロナ前には多くの人は疑いすら持ちませんでした。
 それくらい、人は「前提を疑う」ということが苦手なのです。
──ビジネスにおいて具体的に言うとどういうシチュエーションでしょうか。
 そうですね。以前、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)という書籍を執筆して、倒産企業の分析をしていて気づいたことがあります。
 日米欧で倒産した25社が倒産に至るまでの経緯を分析しているのですが、倒産した企業に共通していたことの一つは「疑わない組織」もしくは「疑えない組織」でした。
 やはり組織の中で「前提を疑う」のは体力を使うことです。できることならば、疑うことは避けておきたい。
 だから、無意識でいると、さらさら読みやすい本ばかり手に取ってしまいます。
 もちろん、このカテゴリーの読書を通じて、自信を強めること、そして実践力を高めることは大事です。しかし、それだけだと「現状肯定」の枠組み中でぐるぐる回ってしまうことにもなりかねません。
──同じ組織に長くいると、同じ人たち、同じ習慣や価値観という狭い視野に慣れてしまうということでしょうか。
 そうなんです。
 だから、私たち自身の前提に気づくには、違う存在との対比が必要になります。違う存在に触れることによって、初めて自分たちの当たり前に気づけるのです。
 たとえば古典的な哲学書は、書かれた時代も国も経験も異なります。だから最初のうちは本を読んでも何を言っているのかよくわからない。しかし、そのレンズを頑張って馴染ませると、ようやく今の時代に当たり前だと考えていたことが、実は当たり前でなかった、ということに気づくのです。
 自分自身では気づけない「当たり前」に気づくこと。これは一人の力ではとても難しいことです。
 だからこそ、新たな問いや新たな答えを与えてくれる書籍の力を借りることによって、自分自身や自分のビジネスの本質に気づくことができるようになるのです。それこそが、読書の本質的な価値だと思います。
──そのために、やはり古典が必要になってくるのでしょうか。
 必ずしも古典に限る必要はありませんが、もし「新たな問いを持つ」というカテゴリー1の選書を増やしたいのであれば、「古典的名著」は一つの選択肢だと思います。
 なぜ昔に書かれた文章がいまだに古典として残っているのかというと、シンプルに賞味期限が長いことが書かれているから。
 はるか昔にも、今日のネット記事のようなノリの、その時代でしか通用しなかった賞味期限の短い知恵はあったのでしょう。しかし、そのような知恵は時代とともに私たちの目に触れることなく消えていってしまっています。
 今日残っている古典というのは、それが人類としてどの時代でも、どの環境でも通用する汎用的な知恵だからなのです。いわば、長い時間をかけてトーナメント戦を勝ち残ってきた書籍なのです。
 たとえば、プラトンが書いた『ソクラテスの弁明』は、約2400年前に書かれたにもかかわらず賞味期限は過ぎていません。いつの時代にも通じる汎用的な問いと答えが提示されているからです。

読書は、10分の隙間時間を活用する

──コロナ禍によって在宅時間が増えた人も多いと思います。電子書籍を利用した読書時間は増えましたか?
 外出の移動時間が減ったことで、読書時間はかなり増えましたね。それに伴い、電子書籍を読む時間も増えました。特に隙間時間に電子書籍は使えますね。
──まとまった時間を取るのではなく、隙間時間に読書ですか?
 Kindle電子書籍リーダーをパッと開いて、ミーティングの合間に10分でもあればその場で読みますし、30分あれば外に出てベンチに座って読みます。
 特にミーティングの合間の時間は、少しでも環境を変えると思考が変わるのでおすすめです。それから、お風呂の時間はマスト。最近のKindle電子書籍リーダーは防水*機能が搭載されているものもあり、湯船に浸かる10分間は電子書籍の世界へ没入しています。
*発売中のKindle Oasis、Kindle PaperwhiteはIPX8等級の防水機能を搭載している
──1冊の本をバラバラの隙間時間で読み進める、ということでしょうか。
 いえ、僕は常に10〜20冊くらいを並行して読んでいて、その時々で自分の頭のコンディションや興味にフィットした本を選んでいます。
 たとえば、イベントの登壇後は脳みそが疲弊しているから哲学書は読めません。軽く読める本やマンガなどを5〜10分くらいパラパラとめくっています。
 特にマンガは、Kindle Oasisの画面サイズが大きいこともあり、Kindle Paperwhiteから格段に読みやすくなりました。
──読みかけのまま、読まなくなる本もあるのでしょうか?
どこでも読書をするため入手した荒木氏の歴代Kindle 電子書籍リーダー
 たくさんありますよ(笑)。なかには読めていない本が書斎とKindleの中で眠っています。でも、机の上に並べただけの「積読(つんどく)」もすごく大事で、背表紙からのメッセージはいいプレッシャーになるんです。
 たとえば、何か新しい企画を考えているときに、ダンテの『神曲』が目の前にあると「小さい軸で考えるな、もっと広い時間軸で考えなさい」という無言のメッセージを受け取ります(笑)。
 自分が積読に囲まれていると、知的欲求や好奇心が喚起されますし、少なからず思考や言動に影響を与えます。だから、買ったけれど読んでない本が積まれているのは悪いことではありません。

読書は、読後のアクションが重要

──複数の本を同時並行で読み進めると、内容が頭に入らないということはないのでしょうか?
 大切なのは、読む行為そのものではなく、本を読んだ後のアクションにあると思っています。
 まず、本を買ったタイミングで必ずやることは、買った直後にとにかく5分でもいいから軽く目を通し、気になった箇所にマーカーを引いてピックアップする。
 紙の本なら背表紙が見えるようにして積んでおく。それができると積読も資産になりますし、ストックされた書籍にいつでも戻れる切符を手に入れることになります。
 読んでいるときも、印象に残った文章をマーキングします。
 この買った直後のアクションと、隙間時間の読書で得られたマーカーを組み合わせることで、後から簡単に振り返ることができます。
──文章のマーキングについて具体的に教えてください。
 僕の場合、ビジネス書は人前で話すときの引用を目的としているので、Kindleでマーカーを引きながら読んでアーカイブし、必要なときにすぐ手元で呼び出せるようにしています。
Kindleのハイライト機能を利用してマーキングしている様子。選択した文字がクラウドへ送信され、Kindleのメモとハイライトを利用して、どこからでもマーキング内容を確認できる。
──マーキングすることで、自分だけの知識の引き出しにいつでもアクセスできるようになるんですね。
 マーキングは、読後のアウトプットにも役立ちます。
 アウトプットはTwitterでもnoteでも自分のメモ帳でも構いません。ただ、この「読後のアクション」がない読書は、ひたすら情報が抜け落ちていくだけです。
 僕の場合は、マーキングを参照しながら、自分にとっての学びは何だったのかを、Voicyでの放送を通じて言語化しています。
 そして、本は読むタイミングが重要で、10年前は意味を感じていなくても、10年経って読み返すと「これは新しい!」という新たな発見につながることが多々あります。だから、Kindleでマーキングをして、必要なときに取り出せる状態にしておくことはとても大切ですよ。

一昔前とは変わったKindle Oasisの電子書籍体験

──電子書籍はスマホで読むこともありますか?
 僕は難しいですね。やっぱり没入できませんから。
 スマホの場合、プッシュ通知が絶えず鳴り、反射的に通知をタップして他のアプリを見ていることも少なくありません。ノイズが多すぎます。
 たとえば、お風呂はとてもおすすめの読書環境ですが、せっかくお風呂という誰にも邪魔されない空間にいるのなら、防水機能がついた電子書籍リーダーが最適です。本の世界に入り込むことで、より内容を吸収しやすくなる。
 電子書籍リーダーはモッサリとした動きでサクサク読めない、思い通りに動かせないといったストレスを感じたことがある人は、ぜひ2019年に発売されたKindle Oasisを試してみてください。
 僕は2012年に発売された初期のKindle電子書籍リーダーを愛用し続けており、最近までKindle Paperwhiteを使っていたのですが、Kindle Oasisを手に入れてからは、明らかに電子書籍の読書体験が変わりました。
──一番の違いはなんでしょうか。
 とにかく反応速度が速いことですね。これは驚きました。サクサク読めるし、思い通りにマーカーも引けるし、ノンストレスで読書ができます。
 Kindle Paperwhiteで買って読んでいなかったマンガの一気読みを、Kindle Oasisで始めました。
 あと、ちょっとしたことなんですが、Paperwhiteとは違ったシルバーのデザインがリッチさを出しています。読書って意外と五感の体験が影響するものだから、高級感ある手触り感は気に入っていますね。それに、持っていて疲れないくらいの重さなのもいい。
電子書籍リーダーを使ったことがある人はもちろん、使ったことがない人も、きっとKindle OasisのUXに驚くと思います。快適な読書ライフを送れますし、読書に大切な読後アクションの習慣づけもしやすいと思いますよ。