[ロンドン 24日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は24日、英経済が新型コロナウイルス感染拡大の影響から回復する中、世界的な供給網(サプライチェーン)の制約による物価上昇が予想されているものの、長期的な影響は及ばないとの見解を示した。

英国のインフレ率は原油高などを背景に4月は1.5%と、前月の0.7%から大きく上昇。ベイリー総裁は議会金融委員会への年次報告で「こうした一過性の要因が中期的にインフレに直接的な影響を及ぼすことはほとんどないと金融政策委員会はみている」とし、インフレ期待は「しっかりと抑制されている」と述べた。

ただ、インフレ圧力が広範な産業分野に広がった場合、中銀は金融政策スタンスを再考しなくてはならないとし、「今後はインフレの兆候の中身を非常に慎重に見ることが必要になる」と述べた。

英中銀のチーフエコノミストを務め、今月の政策決定会合で債券買い入れ枠の縮小に賛成票を投じたハルデーン理事は「インフレ期待が中銀より先に調整する状況や、インフレの影響が一時的でないという確証が得られるまで中銀が行動しないといった状況を回避する必要がある」と述べ、対応が遅れる可能性に警戒感を示した。

金融政策委員会のソーンダース委員は、現在世界的に物価を押し上げているサプライチェーンの圧力は英国での長期的なインフレ上振れを示唆していないと指摘。「労働市場の余剰能力によってしばらくの間、引き続き抑制される可能性が高い。基本的な賃金の伸びは比較的弱く、サービス部門の物価上昇は抑制されている」と述べた。

ただ、経済が予想通りに力強く成長すれば、向こう3年間で0.5%ポイント程度の小幅な利上げが必要になる公算が大きいとし、「5月の金融政策報告の見通しの通りの展開になれば、将来的に緩やかな引き締めが必要になる。ただ今はまだその時でなはない」と述べた。

カンリフ副総裁は、現在200万人超の賃金を支払っている政府の雇用支援策が今年9月末に終了した後の労働市場を注視する考えを示した。賃金上昇率や失業率は政府の雇用支援策でゆがみが生じているため、労働市場の実際の緩みは不明瞭だとした。

ベイリー総裁はこのほか、仮想通貨などの資産に対する慎重な姿勢を改めて表明した。