『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意
コメント
注目のコメント
本書の論旨は2つのパラドックスから現状を認識している点がポイントかと。つまり、①ジェボンズと②ローダーデールの2つのパラドックスです。
①ジェボンズは技術革新が進めば逆に資源消費が進むとし、②ローダーデールは財の希少性を増して私財を増やせば公富が減らざるを得ないとする。
これらに対して近年も色々な対策が提言されていますが、本書ではマルクスの使用価値を使って「コモン」に立ち返るような幾つかの事例を紹介しています。事例紹介とマルクスの肩に乗るだけだとすれば弱いですが、問題点を指摘するだけでも十分価値は有るでしょう。
もし①や②を前提として、使用価値で回す経済をどう構築するかといったアプローチを提言する人が出てきたら面白いのですが、総叩きに合いそうな気がします。
しかし①のイノベーションの盲目的礼賛といった現象や、(私財と公財に分けた)財の保存則のような観点もとても興味深いですが、検証してみると本当にそうなのかといった疑念も浮かびます。
なので極めていくテーマとしては、マルクスを読み込むことも良いのですが、
⓪資本投下 → ①技術革新 → ②経済的価値付け → ③経済成長
(脱成長)
といった図式を仮説として、
どうやって③経済成長を描くかまで踏み込む必要があるでしょう。
つまり③を脱成長や省エネに置き換えてしまうと、DXならぬPX(Principle Transformation )を必要とするはずで、ここは議論の余地があるところです。PXは革命とも捉えられますから。
①と②の根拠となるデータや論理展開を検証することを地道に進めれば、面白く納得する結論が出てくるかと思います。現時点の本書の結論には態度を保留せざるを得ないですね。