2021/5/23
「天職」は見つけるものか、つくるものか?
火曜夜10時からNewsPicksとTwitterで配信中の「The UPDATE」
5月18日は「転職&副業でチャンス到来? 働き方の未来とは?」と題し、村上 臣氏(リンクトイン日本代表)、正能 茉優氏(ハピキラFACTORY代表取締役/パーソルキャリア新規事業企画)、石倉 秀明氏(キャスター取締役COO)、佐藤 留美氏(JobPicks編集長/NewsPicks副編集長)とともに徹底討論した。
5月18日は「転職&副業でチャンス到来? 働き方の未来とは?」と題し、村上 臣氏(リンクトイン日本代表)、正能 茉優氏(ハピキラFACTORY代表取締役/パーソルキャリア新規事業企画)、石倉 秀明氏(キャスター取締役COO)、佐藤 留美氏(JobPicks編集長/NewsPicks副編集長)とともに徹底討論した。
コロナ禍で働き方が急速に多様化したことから、自分の働き方やキャリアを考え直す人が続出している。現に、コロナ禍がきっかけで転職活動を始めた人は6割にも及ぶ。
その背景の1つに、転職の常識が変わった点が挙げられる。村上氏の著書「転職2.0」によれば、これからの転職は自分の市場価値を最大化するための手段になり、必要となる行動や考え方も変化してるという。
さらに企業の7割が職種別採用を行い、半数が社員の副業を認めるなど、制度側も変化しつつあるのだ。
またイェール大学教授のエイミー・リゼスニュースキの研究によれば、人びとの仕事観には
(1)仕事をキャリアと考えるタイプ
(2)仕事を単なる仕事と考えるタイプ
(3)仕事を天職と考えるタイプ
の3つのタイプがあるという。
なかでも高いパフォーマンスを発揮し、大きな満足度を抱いているのは(3)のタイプだ。
仕事を天職だと考える人は、夢中になれることや原動力を見極めることができるので、自然と得意なことが活かせるようになる。それに伴い成果が高くなれば、報酬も上がり、やりがいや幸福度まで高くなると推察できる。
では果たして、天職と巡り合い、さらに転職市場において必須になる自分の「タグ」を見極めるにはどうすればいいのか。4名の論客とともに議論した。
INDEX
- 「天職」の定義とは?
- 「得意×好き」のゾーンを増やす
- 「天職」は、どうやって見つける?
- 副業も天職への道しるべ
- 自分の「タグ」は他人に聞け
- 「なのに」キャリアを見つけよう
- 本日のキングオブコメント
「天職」の定義とは?
村上 天職とは何かと問われても、そう簡単にはわからないですよね。
たぶん死ぬ3秒前ぐらいに「俺、この仕事が天職だったな」と思うかもしれない。それくらい不明瞭なものなの。だから結局、「今」が一番大事なんです。
今この時間を幸せに、楽しく働けているか。もしそう感じられているのであれば、それは「天職」だと思います。
キャリアというものは積み重ねてから振り返ってみないと、わからないものなんですよね。
いいときもあれば悪いときもある。人生は振り子だと思うので、その時々でベストなチョイスはできない。その代わり、ベターなチョイスをいかに積み重ねるか、その精度をいかに上げるかというところが大切なんじゃないでしょうか。
正能 私も、キャリアというのは「結果論」であって、後出しじゃんけんだと思います。
というのも、前回出演されたローランドさんが「天職というのは、宝くじに当たったとしても、やりたい仕事」とおっしゃっていました。私も同じような考えで、天職とは「家でNetflixを見ているよりも、こっちのほうがいいかも」と思える楽しさがあることかなと思っているんですよね。
私自身、Netflixが大好きなのですが、それより優先したいなと思えるような仕事は何だろうと思ったときに、「楽しい」ということに加えて、他者からいいねと言われたり、社会から必要とされたり、求められたりするということが大事なんじゃないかと。
だからこそ、やってみないとわからないと思うんですよ。
まずはやってみる。それが楽しかったり、あるいは人から必要とされたり、求められりしたら、それは天職だというふうに私は思っています。
古坂 僕もほぼ同意ですね。天職とは他人の評価で決めるものだと思っているんですよ。だから最初は自分じゃ気付かないのでは。
正能 だから副業っていいなと思っていて。今の仕事を辞めて新しく始めるってすごい怖いじゃないですか。
自分の天職を見つけるためにも、今の仕事をキープした状態で、なんでもやってみる。その手段のひとつとして副業はいいと思います。そしてそれが評価されたら、転職してみることもできますよね。
奥井 石倉さんはちょっと違って「好き嫌い」と「得意苦手」の軸で分かれています。
「得意×好き」のゾーンを増やす
石倉 天職という言葉は、天から降ってくるとか、巡り合い、みたいなイメージがありますけど、僕は「天職はつくることができる」と思っています。
要するに、「得意で好きなこと」も天職と呼べる。自分が得意で成果が出ていて、しかもやっていて面白いと思う仕事だったら、楽しいじゃないですか。毎日、仕事をしていてもそんなに苦じゃなくて、楽しいと思える人は貴重。なので、得意で、かつ好きなゾーンをいかに増やせるかというのが大事です。
石倉 ですが、好きだけど、苦手ゾーンに行っちゃうと、地獄みたいなメンタルになるわけですよ。「すごく好きなのに自分はできない」のは、やっぱり厳しい。
なのでどちらかというと、「得意なことを増やす」ことだけに専念した方がいいです。目の前の仕事に向き合って、ひとつずつ得意にしていくと、実は得意で好きなゾーンは増えていくし、仕事をしていて結果が出ないことはずっと好きではいられないですよね。
結果、得意なことを増やし続けると、天職は勝手に増えていくんじゃないかな。
正能 「得意だけど嫌い」というゾーンも、周りの人が評価してくれているうちに、好きになっていくかもしれませんしね。
村上 得意なことが市場のニーズと合っていれば、なお良いですよね。そのためにも、今いる場所の「外」を見ることは必要かなと思います。
石倉 そうですね。「転職市場」って1つしかないように聞こえがちじゃないですか。
でも例えば、A社では面接に落ちるけど、B社だと面接に高評価で受かる場合があったり、この上司だと評価されないけども、また別の上司からは評価されるってこともあるので、市場も1つではない。外に目を向ければいろんなニーズがあるんですよ。自分の得意を認めてくれる市場を見極めることも必要ですよね。
奥井 佐藤さんの3原則の中にも「得意」が入っていますよね。
佐藤 私は「得意が生かせて、価値観が合う」ものが天職だと思います。
人が何に喜びを感じるかは、全員ばらばら。例えば、コミュニティーマネジャーをやってる私の友人は「人に協力したり、貢献する」というのが何よりも好きなんですって。私は全然そうは思えなくて(笑)もちろん人に貢献したい思いはありますけど、自分の大事にする価値観でいうと4番目くらい。それより、私は創造するほうが好きで大事にしたい価値観の上位になります。
どちらが優劣だというのではなく、価値観と職の目的がフィットしているというのが大事なんじゃないかなと。それと村上さんがおっしゃったように市場からのニーズがないと、末広がりになっていきませんよね。ですので、「将来性の高さ」というのが、得意、価値観に加えて、私が考える天職の3原則です。
「天職」は、どうやって見つける?
奥井 では「得意なこと」の見極め方は?
正能 自分の得意なことが、どの環境だと認められるのかを意識しています。今できることを「それ、いいね!」と褒めてもらえる環境に自分で動いていくということが大事なんじゃないかな。
奥井 例えば天職だと思える「職種」は分かっていても、どこの「職場」がいいかがわからない場合、どう選べばいいのでしょうか?
石倉 僕もやりたいことがそんなにあったタイプじゃないんですけれども、僕自身の選び方は、「自分的にはそんなに苦にならない仕事だが、その会社では得意な人があまりいない」という基準で選んでいるんですよ。
古坂 この中だったらいけるぞ、と。
石倉 そうなんです。例えばIT系のスタートアップでは、プロダクトやウェブサービスをつくるのはすごく得意だけど、法人営業ができる人がいないという問題が多い。そういう場では、営業スキルってとても重宝されるんです。僕はそういう環境を見つけて、会社を選んだりします。
佐藤 私は、職場は「価値観がフィットするかどうか」で選んだらいいと思います。
正能 極論、職種には向いている、向いていないはあるけれども、職場は一緒に働く「人」が重要だから、「好き嫌い」という感覚値で選んでいいと思うんですよ。
古坂 僕はサラリーマン経験がないのでわからないんですけれども、「職場」とはつまり、どういうことなんですか。
村上 会社組織自体のカルチャーのことですよね。要は、その会社が「何を良しとしている」か。
そのなかで極論、何をしたら褒められるのか、もしくは何をしたら怒られるかという点で見ていくと、自分のやり方と合う・合わないがわかってきて、それがひいては好き・嫌いの判断となる。
自分が今やっている仕事の中で、何に1番わくわくするのかというものを突き詰めならが、それに加えてカルチャーが合ったとしたら、それは天職なんじゃないかなと思います。
副業も天職への道しるべ
奥井 わくわく感とカルチャー以外に、試しに「副業」してながら見極めてみるというのもあると思います。今は社内副業もあるじゃないですか。
正能 そう思います。組織の寿命と個人の寿命を比べたとき、もともとは個人の寿命のほうが組織の寿命よりも短かかったから、1人が1社に勤めていればよかった。
でも、それがどんどん逆転してきて、個人の寿命より組織の寿命のほうが短くなりました。だから個人は1社だけでは生き延びることができなくて、2社目、3社目を常にネタとして仕込んでおかないといけない。
そういう意味では、副業をうまく使いながら、自分の好きなこととか得意なこととかを見つけるやり方はアリなんじゃないかなと思っています。
佐藤 私が立ち上げたJobPicks編集部も、誰に頼まれたわけでもなく自分から「やらせてください」と言ったんです。そしたら会社から「NewsPicksもちゃんとやる」という条件がつけられたので、今はNewsPicks編集部と兼業しながら、半々でやっています。
石倉 うちの会社だと40%ほどの社員が副業をやっていたりしていて、全然ポジティブなんですが、実際には結構難しいなと思っていて。
会社員で8時間働いたうえで副業をするとしたら、平日の夜か、土日にやるしかない。今はリモートメインになったので少しはやりやすくはなったものの、できて週1日ぐらい。
なのでもし副業で自分のスキルを探りたいなら、社内の他の部署に聞いてみるのもいいのでは。
例えば、営業の仕事をやりながらマーケティングにもチャレンジしたいと思ったら、マーケティングの部署に行って「お手伝いさせてください」と頼んでみる。それが実は一番、手っ取り早くいろんな職種やスキルを経験できるんじゃないかな。
奥井 最初はお金とかは関係なくて、手伝いというスタンスで。
石倉 そうですね。あともうひとつ副業がいいなと思うのは、転職するとき。
転職してみてから実際にその仕事をやってみたら、思っていたより違ったということはあり得ます。転職したいと思う起業にまず副業で入ってみて、働いてから決めるというのも、副業の使い方としてすごくいいなと個人的には思います。
自分の「タグ」は他人に聞け
村上 自分で得意だと思っていることと、人から見て「あなたはこれが得意だ」と思われていることには、ギャップがあるんですよね。
なので、自分の「得意」を知ろうとするとき、人に聞いてみるのが一番です。僕がお勧めしているのは、他己紹介をしてもらうこと。
自分のことを、友達に紹介してもらうんですね。それを聞くと、自分では認識していなかった強みに気づくことがある。
村上 僕の場合、以前は「モバイルに強い」と紹介されることが多かったんですけれども、最近は「働き方に詳しい」とよく言われるんですよ。
要するに、タグも変化しているんですよね。そしてその時々で自分のタグの1軍と2軍を用意しておいて、それの出し入れをする。
「このタグはそろそろ1軍から落とそうかな」というのもありですし、2軍のものが時代と合ってきたら「これはちょっと上げてみようかな」というのもいい。
フィードバックを得ることによって、今の1軍のタグは何なのか、常に最新にアップデートしておく。
奥井 佐藤さんの「対話」も、他人に聞いてみるということですか。
佐藤 そうですね。私も、社外のメンター的な人に定期的に相談に乗ってもらったり、同僚にダメ出ししてもらったりしています。そうすると意外な取り柄というか、タグを見いだしてもらえる。やっぱり聞かないとわからないですよね。
石倉 タグは人が付けるんですよね。ただ「こういう人になりたい」からといって自分で付けたタグって、圧倒的にレッドオーシャンなんですよ。
なので、タグとか自分の強みとか言う前に、目の前の仕事に向き合うという意味で「目線を下げろ」とよく言っています。すごく先を見るんじゃなくて、目の前のやらないといけないことを一生懸命やることのほうが近道だと思います。
「なのに」キャリアを見つけよう
正能 私はちょっと考え方が真逆で、タグこそ自分で勝ち取りに行かないとだめだと思っています。
正能 「スラッシュキャリア」とは、Twitterの自己紹介欄で複数の経歴やスキルをスラッシュでつなげる表現のこと。キャリア形成でも同じく「スラッシュ」で考えることが重要ですが、その際に「なのにキャリア」という発想がすごく大事になってきます。
なのにキャリアとは、「〇〇なのに××である」という意外な掛け合わせのこと。例えば「モデルさんなのに経済にめちゃめちゃ詳しい」といった感じ。
そして「なのに」の組み合わせの違和感が面白くないと、その人の価値は上がっていかないと思うんですよ。
その人の価値を最大化するためには、「〜なのに」の組み合わせを面白くして、いかに希少性を上げていくかというのがポイントだと思っています。
だからこそ、「AなのにB」という、いい意味で違和感のある組み合わせを自分で考えて、そのタグを勝ち取りに行けと私は思っています。
奥井 スラッシュのタグは多ければ多いほどいいんですか?
正能 多ければ多いほどいいという発想が、私は結構危険だなと思っていて。その組み合わせが面白いと思われるかどうかが大事です。
石倉 「なのにキャリア」の「なのに」を3つぐらい作ったけど、全然関係なさすぎて、何も活かされていない人っていますよね。
正能 「なのに」というのは反対の価値観ではあるんだけれども、それを掛け算したときに一定の価値を生み出すかどうかが大事です。その掛け算を聞いたときに、人がそれはいいねと思える時間やサービスが想像できるのかがポイントです。
奥井 「なのにキャリア」で面白かった例を知りたいです。
佐藤 産業医で、NewsPicks Sturiosの番組『OFFRECO.』のレギュラーでもある大室正志さん。「医師なのに、ビジネス芸人」じゃないですか。
タグの掛け合わせをわざとずらしていますよね。そこに彼の独自性が出ていて、キャラが立つんだな、と。あれも「なのにキャリア」のある種、成功例なのかな(笑)
本日のキングオブコメント
自分がどういうタイプで、何に価値を感じているのか──自分の特性を知るためには、まずは与えられた仕事に真剣に向き合ってみる。その上で自分のタグや、得意なことに気づく機会は、副業や他部署の「お手伝い」など、自ら起こすアクションによって生み出すことができる。
天職とはそういった行動の積み重ねの過程において、自分自身で「つかみ取る」ものであると筆者は考える。
執筆:奥井奈南
編集:川口あい、木嵜綾奈、米山朱茜
デザイン:斉藤我空
編集:川口あい、木嵜綾奈、米山朱茜
デザイン:斉藤我空
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