[東京 14日 ロイター] - 東芝は14日、新たな中期経営計画を10月に公表すると発表した。脱炭素や地球温暖化対策に関連した事業を柱と位置づけ、事業を再編する。同時に取締役会の意思決定を支援する戦略委員会を設置し、非上場化を含め様々な株主提案を検討するという。

<今後の事業の核はカーボンニュートラル>

新中計の対象期間は来期から2024年度までの3年間。会見した綱川智社長は「カーボンニュートラル、地球温暖化を解決する流れは成長のチャンス。我々の強みもその分野にある」として、太陽光などの再生エネルギー、省エネ分野のパワー半導体、水素などの新技術関連事業などを核に据えると明らかにした。

一方、コロナ禍の長期化や米中貿易摩擦といった事業環境の急速な変化を受けて、事業の再編も一段と進める。「変化を考慮して事業ポートフォリオの見直しを含め、計画をまとめる」(社長)という。

新設する戦略委員会は中計の策定を支援する。委員は6月25日の定時株主総会で就任する社外取締役から選任する。UBS証券と長島・大野・常松法律事務所が、財務面と法務面から委員会を支える形となる。

東芝を巡っては、昨年夏の株主総会で一部の議決権が結果に反映されなかったり、経済産業省の関係者が複数の海外株主に事前に接触していたことなどが明らかになり、筆頭株主が調査を要求。3月の臨時株主総会で調査委員会を設置することが決まっていた。

その後、4月に英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが同社に買収を提案。当時社長だった車谷暢昭氏が同ファンドの出身者だったことから、不透明さを指摘する声が広がった。車谷氏は辞任し、CVCは買収提案を凍結した経緯がある。

<適正資本超えれば継続的に株主還元>

同時に発表した決算によると、今期連結営業利益は前期比62%増の1700億円となる見通し。前期に計上した構造改革関連費用がなくなることに加え、調達・構造改革の進展が実を結び、800億円分の増益効果を生み出すとしている。

IBESがまとめたアナリスト13人の予想平均値は1786億円。会社計画は小幅に市場予想を下回る水準だった。

前期の当期利益が1140億円と20年3月期の赤字から大幅に黒字化したため、期末配当を30円増の70円とし、1500億円の追加還元を実施することも発表した。6月に具体策を決定する。

株主還元にあたり、同社はリスク資産の状況や事業計画の進ちょくを踏まえて株主資本の適正額を算出。期末の株主資本から、その適正額と配当金を除いた分を株主還元に回す。今期以降もこうした措置を「継続的に行う」(社長)という。前期の「適正資本」は9800億円と算定した。

4割を出資する半導体大手キオクシアは、現金化を引き続き検討する。実現した場合、手取り金額の過半を株主に還元する。キオクシアは昨年秋に上場する予定だった。

<非上場化提案「検討やぶさかではない」>

株式の非上場化などを提案している英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズとの交渉は「(4月に)開示した通り。それ以降、新たな提案は受けていない」(社長)という。同社は4月、CVC案は具体策に乏しいとして、提案に応じないとの声明を発表している。

また、綱川社長は「非上場化を含め、様々な企業価値を上げるための提案を受けること、それを検討することは、やぶさかではない」との考えを示した。先月の声明で同社は「上場会社としてのメリットを生かすことが、企業価値の向上につながると現時点で確信」としていた。

<東芝テックのハッキング、本体に影響なし>

傘下の東芝テックグループの欧州子会社が、サイバー攻撃を受けたことについては「ネットワークを完全に共通化していない」(加茂正治専務)ため、影響はなかったという。

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