2021/5/24

【徹底討論】令和の働き方改革は「休憩」から始まる

Newspicks Studios Senior Editor
ここ1年ほどで働き方は急激に変化した。それに伴い「休み方」にも新たな価値観が求められている。
令和時代に、自分らしく働くための「休憩改革」とは? 多様な論客たちと考える。

知的生産性向上のためにも「休憩」は必須

 生産性について考えるときに重要なのは「昭和と令和で『生産性』の定義が変わってきている点」だと言及したのは、産業医の大室正志氏だ。
「昔だったら単純作業で数をこなしていくことが生産性向上のひとつでしたが、現在は数より質を重視しています。つまり、たくさんの問題を数多くクリアするより、難しい課題ひとつをじっくり解決するような『知的生産性』が求められる。
 こうした知的生産性の向上には、休憩は欠かせません。頭がクリアな状態じゃないと進まないからです」(大室氏)
 現代の象徴とも言われる知的生産性を上げる仕組みについて、元マイクロソフト日本代表の成毛眞氏は「〆切を設定すること」が大事だという持論を展開した。
「僕もそうなのですが、クリエイティブの仕事は、締め切りがあるからこそできるといっても過言ではない。
 ただその締切りが少し遠かったりすると、休憩というか、サボっちゃうんです。でも実はこのサボりも大事で。例えば私の場合、本を作っていると締め切りが1年後だったりするのですが、そのうち3カ月サボったとすると、残りの9ヵ月の生産性がすごく向上するんです」(成毛氏)
 では、実際にどのような休憩法が効果的なのか? 元オリンピアンで現在はアスリートのメンタルコーチも務める田中ウルヴェ京氏は「『動と静、体と心』の四象限で考えてみては」と提案した。
「人にはそれぞれ、最適な心と体の状態があります。日々のタスクごとに自分の休憩法も変えて、その最適な状態に戻すことが重要です。
例えば『動的な心』を欲するのであれば、お酒を飲んだりカラオケに行ったり、体に良くないかもしれないけど心はわくわくするような休憩をしてみる。『心の静』であれば、マインドフルネスなことや瞑想など、自分の軸を感じることをしてみる。
それをすることで自分のベストな状態に戻せるようになるのが、休憩では重要だと思います」(田中氏)

現代人は「アクティブレスト」ができない?

 休憩の効果について、フラワーアーティストの前田有紀氏は「休憩をすることで五感のバランスが整い、発想力が磨かれるのでは」と述べた。
「ただじっとしていることだけが休憩ではないと思うんです。例えば私は今日、早朝3時から花の仕入れにいってそのまま仕事をして、この現場に来ました。その間、夕方くらいに2時間ほどテニスをしたんですけど、すごくスッキリしたんですよね。
 自分にとって気持ちが変わることは何でも休憩になると思うんです」(前田氏)
 一方で、ホストとして24時間働き続け、現在は実業家として活躍するローランド氏は「何もしない時間をつくる」ことが、自身がリフレッシュできる休憩法であると言う。
「でも、日本人は“何もしないでいられる人”が減っているような気がします。
 僕はたまに電車に乗って何もせずボーッと車窓を眺めることがあるのですが、ほとんどの人がスマホをいじっている。休み下手な人が多いのかもしれません」(ローランド氏)
 ただそれも悪いことではない。
「イタリア人などは長期休暇取得が普通で、そんな風に休めるってかっこいいなと思うこともあるけれど、日本人が休み下手なのは勤勉であると捉えることもできる。
 これだけ働ける日本人はすごいという見方もできるのでは」(ローランド氏)
 これらの意見をまとめるような流れで、大室氏が「例えば仕事でひとりの作業が多い人は休憩では誰かと雑談するなど、普段の仕事で使っている脳や体の部分とは違う場所を、休憩時に使うように意識するといい」と言及。それに対し田中氏も「大事なのは、自分が脳や体をどのように使ったのかを知ること。それによってどんな風にリラックスすべきかが決まります」と追加した。
あえて体を動かして疲労回復をはかるアクティブレスト(積極的回復)を実践するなど、工夫を凝らして質のいい休憩を取るといいかもしれません」(田中氏)
 その他にも、忙しい現代ビジネスパーソンが明日から使えそうな「休憩Tips」はあるのか? 前半の白熱した議論を踏まえ、大室正志氏、ローランド氏、前田有紀氏、田中ウルヴェ京氏のコメントとともに考えた。

令和こそ『脱・昭和』できるか?

 令和は「好きなことを仕事にする時代」だと口火を切ったのは、ローランド氏だ。
「昭和の時代は、人間の尊厳やプライド、ロマンなどをお金に換金していましたよね。当時はそういう発想、つまり『とにかく稼ぐこと』がステイタスでもあった。でも令和の時代は、人間としてのプライドや楽しみを換金せずに、ロマンを持ちながら働くことが大切なんじゃないかと思うんです」(ローランド氏)
 また、経営者として組織を運営するうえで気をつけているのは「周囲にYESマンを置かないこと」だという。
「反対意見を言ってくれる人は貴重です。YESマンだけが周囲にいる人間は成長しないし、NOが言えない人のYESには価値がない。
 NOを言える人間になるには知識や経験も必要になります。社員には、何か気になれば遠慮せずに言ってほしいと伝えています」(ローランド氏)
 大室氏は、昭和の時代背景と働き方について、次のように考察する。
「昭和時代は、スキー場にプールを作ったり都心にスキー場を作ったり、“アンチ自然”なことが人間の拡張された身体性のように捉えられ、かっこいいと思われていた。そんな時代の働き方を象徴するのが『24時間戦えますか』のキャッチフレーズです。
でも私たちは、それには限界があると気づいた。今は、自然のある場所でそのままを体感するようになっているし、自分のスペックを理解しながら無理なく働くことのほうが大事な時代です」(大室氏)
令和の働き方を考えるとき、昭和との比較は欠かせない。成毛氏も、令和は「反昭和」であるべきとの考えを掲げた。
「働き方だけでなく、“令和の●●”とついたら、すべて“反昭和”。つまり、昭和の全部を否定することから始めるべきだと思っています。
働き方にしても、今いる会社で自分の望む休憩や休日が取れないのなら、辞めればいいんです。そして自分の希望が通る会社に転職すればいい。少しでも昭和的要素を感じたら、シャットアウトするのがいいと思います」(成毛氏)
令和では「自分軸で生きる」ことが大切だと言う前田氏は、元アナウンサーならではの視点で語った。
「アナウンサー時代は周囲からどう見られるか、どう期待されているかを考えながら生きていて、窮屈に思うこともありました。今は年齢や肩書などからも解放されて、人からどう思われるかはどうでもよくなった。
令和では、自分がどうありたいかを優先し、社会軸ではなく自分軸で生きることが大切だと思います」(前田氏)
 一方の田中氏は、メダル獲得後に「夢が叶ったあとの自分は、どうすればいいのだろう」と迷った経験から、「自分で決めて、責任を取る」ことの重要性に気づいたという。
試合と違って、人生は勝負じゃない。人によって、そして年齢やライフステージによっても課題は変わります。だから、わざわざ比較して縛られることはない。
 そうして自分が責任を取れる範囲内で自由に生きていけば、自然と人の役にも立てるようになる。そんな働き方を目指したいですね」(田中氏)

令和版の「働き方キャッチコピー」をつくるとしたら?

 昭和は「24時間、働けますか?」が、働き方の象徴的なキャッチコピーであった。
 では、令和版を考えるとしたら、どのようなフレーズになるのか? 各人が最後に披露した。
 自分らしい働き方を成立させるためには、同時に自分らしい休憩スタイルを模索する必要がある。多様化する時代の「休憩改革」は、今後もビジネスパーソンにとって重要なテーマとなるだろう。
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