[12日 ロイター] - 米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は12日、ツイッターへの投稿で、テスラ車の購入で暗号資産(仮想通貨)のビットコインを使った支払いを認めない方針を示した。

ビットコインのマイニング(採掘)にかかる環境負荷が理由。仮想通貨支持の方針を修正した。

ツイートを受け、ビットコインは一時10%超下落した。

テスラは2月、ビットコインに約15億ドル投資したと明らかにし、3月にマスク氏が、テスラ車の購入にビットコインの利用が可能になったと表明した。

しかしビットコインの採掘で化石燃料で発電した電力を大量消費することに環境活動家だけでなく、一部テスラ投資家からも批判が出ていた。

テスラ株に投資しているオズモーシス・インベストメント・マネジメントのベン・ディア最高経営責任者(CEO)は2月、テスラのビットコイン保有が明らかになった直後に「ビットコインのマイニングから生じる二酸化炭素の排出量について非常に懸念している」と述べ、テスラ車購入でのビットコインの利用に疑問を呈していた。

マスク氏は12日、特に石炭を発電源とすることへの懸念は理解できるとし「仮想通貨は多くの面で良いアイデアであり、有望な未来があると信じているが、環境に大きな犠牲を払うことになってはならない」と述べた。

ビットコインは、高性能コンピューターを駆使したエネルギー集約型のプロセスを通じて生まれる。現在、コンピューターを動かす電力は石炭など化石燃料に依存している場合が多い。

ケンブリッジ大学と国際エネルギー機関(IEA)が発表した最新のデータによると、こうしたビットコインのマイニングが消費する年間のエネルギーは現在のペースでは、オランダの2019年の消費量と同水準になるという。

アナリストからはマスク氏の方針転換は不可避だったとの声が出ている。

OANDAのシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏は「ビットコイン採掘による環境への影響は、暗号資産市場全体にとって最大のリスクの一つだが、ビットコインがアルゼンチンやノルウェーよりも多くの電力を使用しているというニュースは過去数カ月にわたり無視されてきた」と述べた。

また、ペッパーストーン(メルボルン)の調査責任者、クリス・ウェストン氏は、マスク氏の今回の対応はビットコインにとって打撃となるが、同通貨がもたらす排出量を認めるものだと指摘。「テスラは環境に優しいイメージがあるが、ビットコインは明らかにそれとは正反対だ」と述べた。

デジタル資産運用のコインシェアーズ・グループの最高戦略責任者、メルテム・デミロアーズ氏は、テスラのビットコイン決済による販売実績はあったとしてもそう多くないとの見方を示し、ビットコイン利用停止は対外的にプラスのイメージを与えると同時に、決済手段の簡素化につながると指摘した。

豪ニューサウスウェールズ大学のマーク・ハンフリージェナー准教授(金融)は、テスラ経営陣の急転直下的意思決定に懸念を示した。

<仮想通貨を支持>

マスク氏は、テスラがビットコインを売却することはなく、マイニングがより持続可能なエネルギーに移行し次第、ビットコインを決済に使用する意向だとした。

また、ビットコイン取引にかかるエネルギーの1%未満の使用で済む他の仮想通貨にも着目していると述べた。

ビットコインの採掘を主に担うのは中国。ケンブリッジ大学オルタナティブ・ファイナンス・センター(CCAF)のデータによると、中国の採掘者は約7割を占めるという。

しかし中国の採掘者の間では、割高な再生可能エネルギーに転換しようという機運は乏しく、ビットコインの環境面の課題は早期に解決しそうにない。