ワクチン特許放棄巡る問題、12月までの解決望む=WTO事務局長
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すでに報道されている主な記事は以下にあります。
「米、コロナワクチン特許の放棄を支持 バイデン大統領が表明」https://newspicks.com/news/5822379?ref=user_1310166
「ワクチン特許放棄、EUも検討の用意 モデルナ『供給増えず』」
https://newspicks.com/news/5825110?ref=user_1310166
このほか、フランスは反対表明をしているとのことです。
「特許放棄」という言葉が本来意図するところは、「特許」取得した部分の使用を他社が技術利用した場合で、その使用料を請求できないということを指します。
一方、特許出願すれば技術が公開されるため、企業は戦略上、意図的に特許申請内容からキーテクノロジーになる技術を外したり、あえて特許出願をしない場合があります。特許が完全な知財保護になるとは企業は考えておらず、あくまでも使い方により価値が出ると認識しています。
特許放棄しても、完成したワクチンの特許を保有する企業が、他社にワクチン製造に関するすべての技術を公開し、他社が製造できるように手助けすることは意味していません。
特許が一時的に放棄されても、製薬企業が製造プロセスのすべてについて認可された技術で工場を立ち上げるお手伝いまでしないと、製造まではできません。これをすることは、製薬企業に何のメリットもないためやらないと思いますが、先進国が資金を出し合って工場を作るならあり得ます(しかし、これはCOVAXで実施するとの報道がすでにありました)。
現実的な解決には、「完成品の妥当な値段での提供」が早期の解決の方向性を示していると思えます。特許放棄は早期解決にならないため、WTOの意図を測ることは困難です。(安価での提供を引き出すための交渉術かもしれません)
なお、比較的長期に見れば、特許放棄は特許を無償利用できる側の利益になり、また早期開発にもつながりますが、そこで開発された医薬品は他メーカーが開発した「新規医薬品」との扱いになり、物質としては出来上がっても、新規にステップを踏んだ臨床試験が必要になるため、かなりの時間と費用が必要です。このことによる利益は、発展途上国よりも「日本など先進国の企業」にあると思われますが、これを認めると企業は基礎研究への情熱を失うでしょう。途上国へのワクチン供給には、特許放棄では解決しにくい。EUがファイザー社に総計18億回分の追加注文を出した際、それまでの1回分15.5ユーロだったものが、19.5ユーロに値段が上がったという話だ。つまり、先進国向けは高く、その分を経済的に貧しい国に安く売るという合意らしい。
アメリカが特許の一時停止に賛成するという珍しい状況ではあるが、欧州が反対する限り、コンセンサスで動くWTOは動かない。一時停止しても、ワクチン製造用の原料などの輸出が進み、製造体制が整わないと意味がないので、できるだけ早く行動する必要がある。