いまどきのクルマが「重くなった」は思い込みだった! 安全装備や電子デバイスが充実しても「変わらない」驚異的なメーカーの努力とは (1/2ページ)

燃費対策のためなんとか先代モデル同等に抑えている

 安全装備の充実、衝突安全の関係などでどんどん車両重量は増えている。自動車雑誌などでは、あたかも重量増が当たり前のように表現されていることが多い。はたして、それは事実なのだろうか。

 たとえば、いま日本でもっとも売れているクルマ「トヨタ・ヤリス」を、そのルーツといえるヴィッツと比べてみよう。

 現行ヤリスの車両重量は、ガソリン車が940~1020kg、ハイブリッドは1060~1090kgとなっている。一方で、先代ヴィッツ(130系)の車両重量はガソリン車で970~1010kg、ハイブリッドは1100~1110kgだ。エンジンが全車3気筒になったこともあり、ヤリスは確実に軽量化に成功していることがわかる。

 とはいえ、これはヤリスだけの特別なケースで他車はモデルチェンジごとに重くなっているはずだと思うだろう。なかでも「軽自動車は名前に反して重くなっている」というクルマ好きの批判は出てくるところだ。そこで、車両重量がパフォーマンスに影響を与えるアルトワークスのFFグレードで比べてみよう。

1987年 初代 610kg
1988年 2代目 610kg
1990年 3代目 630kg
1994年 4代目 650kg
1998年 5代目 670kg
2021年 現行型 670kg

 いかがだろうか、意外に重量が増えていない。

 初代と2代目は550cc規格、3代目と4代目は旧660cc規格で、現在の規格になったアルトワークスは5代目からと考えると、衝突安全基準やボディサイズの違いを考えると重くなったとはいえない。

 しかも、15年ぶりに復活した現行型はカタログスペックでは同じ重さになっている。SRSエアバッグやABSなど標準装備アイテムが増えているにも関わらず重量が増えていないということは、実質的にはボディやパワートレインは軽量化しているという意味だ。

 むしろ、いまよりペナペナのボディだった550cc時代と比べて60kgしか重くなっていないというのは安全性能の向上を考えると驚異的といえるだろう。

 たしかにアーキテクチャやプラットフォームと呼ばれる基本設計はそのままに、各種エアバッグなどの安全装備を載せていっただけの時代は、その分だけ重くなったこともある。しかし、ここで見てきたように同じようなボディサイズであれば、素材や設計といった技術の進歩は全体としては軽量化に寄与し、実質的には重くなっていない。

 最新のクルマは装備が増えたことで重くなっているというのは、じつは思い込みといえるのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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モトブログを作ること
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