緊急座談会「 東京五輪は、やっぱり中止すべきか」〜騒動が示す日本の“劣化”ぶり

宮台真司×小笠原博毅×西田亮介

五輪までにはコロナも収まるだろう―。日本人がなんとなく抱いていた淡い期待が今、打ち砕かれようとしている。政治家も国民も、どうしていいのかわからない。誰が決めて、誰が責任を取るのか。発売中の『週刊現代』が特集する。

選手が来ない

西田 東京五輪の開会式は、現時点で7月23日に予定されています。残り2ヵ月半しかありませんが、まだ開催か中止かの決断は保留されている。その一方で組織委員会は、看護師500人を会期中の医療スタッフとして確保する要請を出してもいます。

東京が3度目の緊急事態宣言のただ中にある今、医療資源をこれほど「五輪優先」で振り向けることには、正直に言って疑問を抱きます。

小笠原 先月の世論調査では、中止か再延期を求める意見が7割に達しました。愛知県では先月、聖火リレーのコース脇に「東京五輪、中止の夢を」と書いたプラカードを持つ男性が現れ、運営側に立ち退きを迫られる騒ぎも起きた。

世論を無視して、あくまでも開催を前提にする政府や組織委員会に、違和感を抱く国民は増えていますね。

西田 もしこのまま開催するとしても、無観客になるでしょう。問題は、海外からの観客を入れないのは当然として、選手が集まるかどうかです。

コロナで代表の選抜さえままならない国が多い。まして無理に選手団を派遣するとなれば、国内で反対世論が巻き起こるのは間違いない。各国の指導者が容易に決断を下せるとは思えません。

 

宮台 先月、菅総理はアメリカのバイデン大統領との会談で、選手団派遣の確約を取り付けられませんでした。毎回600人を超えるアメリカの大選手団が来ないとなれば、世界中で「派遣取りやめ」のドミノ倒しが起きます。

昨年一年間の人口あたりコロナの死者数で、日本は台湾の90倍、中国の9倍、韓国の2倍となり、比較的感染が少ない東アジアの中での「負け組」が確定しました。世論の沸騰を思えば、アメリカが及び腰にもなりますよ。

西田 一方で、日本政府は海外の選手が集まらなくても、このまま突き進もうと考えているのではないでしょうか。

過去にも'80年のモスクワ五輪では反ソ連のアメリカや日本、韓国、中国など約50ヵ国が参加をボイコットしましたし、その次のロサンゼルス五輪では、ソ連をはじめ東側諸国が参加しなかった。それでも開催されるのが五輪です。

不完全な形であっても、やると結局「盛り上がった体」になるのが五輪の不思議なところで、今回も「とにかくやれば、ある程度は支持率浮揚につながるだろう」と政権は見ていると思います。

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