2021/5/5

【実録】コロナで3倍。なぜ、日本の「お菓子箱」がバズるのか

NewsPicks 副編集長(NY支局)
アメリカで、日本の「お菓子箱」が急成長を遂げている。
しかも、ただ日本のスナックを寄せ集めたモノではない。日本の地方メーカーによる名産お菓子を毎月テーマごとにキュレーションし、作り手の職人の物語とともに「体験」として届けるものだ。
価格は月額サブスクで49.95ドル(約5500円)というから安くはない。
にもかかわらず、この「Bokksu」はコロナ下で驚異的な伸びを見せ、2020年は前年比で売上高を約3倍にまで伸ばし、毎月3万箱が出荷されている。今や米国の大手メディアも、このプレミアム・スナックボックスの躍進を続々と取り上げ始めた。
一体、なぜ日本のお菓子がアメリカの消費者に刺さっているのか。
NewsPicksは、Bokksuの創業者であるダニー・タン氏への直撃取材を敢行。日本でのキャリア経験を基に「日本のお菓子箱」にチャンスを見いだしたのか、流通網が大打撃を受けたコロナをいかに乗り越えたのか、そして次なる野望はーー。
すべてをロングインタビューで語ってもらった。
INDEX
  • ①楽天という「厳しい会社」
  • ②京都の「老舗」を巻き込む
  • ③まず「白人女性」が食いついた
  • ④なぜ、月額5000円なのか
  • ⑤「もう終わりだ」と思った瞬間
  • ⑥一番効いたマーケティング
  • ⑦エンジニアは「ゼロ」

①楽天という「厳しい会社」

──まず、Bokksuを始めた経緯を。
私は、ニューヨーク出身ですが、スタンフォード大学で心理学と日本語を学びました。
2008年に卒業して、Googleでデジタルマーケティングの仕事に就いた後、東京に移り住みました。アジア人として、日本の近代化に興味がありましたし、日本食や日本文化が好きだったからです。
早稲田大学に入ると、そのまま2010年に楽天に入社しました。ちょうど楽天がグローバル化を始め、バイリンガルの外国人を採用していたタイミングでした。
これはいろんな意味で、良い経験でした。
楽天は、評判通り、上下関係に厳しい会社でした。ただ、そのおかげで、日本語に堪能になれました。当時、英語を全社的に導入すると発表していましたが、ほぼ全員が日本語を話していましたし、敬語を使わないと怒られました。