2021/5/2

【10年史】アップルvs.フェイスブック「全面戦争」への道

INDEX
  • 個人情報の扱いを巡って対立
  • 安全か無料か。噛み合わないビジョン
  • 持ちつ持たれつの「泥沼」
  • アップルが「宣戦布告」に至るまで
  • 両CEOが予測する「全面対決の行方」

個人情報の扱いを巡って対立

2019年7月、アイダホ州サン・ヴァレーで開催されたテック界およびメディア界の大物経営者向けカンファレンスで、アップル社のティム・クックCEOとフェイスブック社のマーク・ザッカーバーグCEOはこじれた関係を修復しようと席に着いた。
投資銀行アレン・アンド・カンパニーが毎年主催するこのカンファレンスで長年2人は情報交換をしてきた。
当時フェイスブックは、個人情報流出スキャンダルの渦中にあった。同社が5000万人を超えるユーザーの個人情報を、本人の承諾を得ず政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカに収集させたことで、ザッカーバーグは議員からも規制当局からも、クックを含む経営者たちからも集中砲火を浴びていた。
ケンブリッジ・アナリティカを巡る問題について、議会で証言を行うマーク・ザッカーバーグ(Yasin Ozturk/Anadolu Agency/Getty Images)
カンファレンスでザッカーバーグは、あなただったら情報流出問題にどう対処しますかとクックに尋ねたと、内部筋は語る。
クックの答えは非常に厳しいものだった。フェイスブック本体以外のアプリで収集した個人情報をフェイスブックはすべて削除するべきだと、彼は答えた。
複数の匿名情報筋によると、この言葉にザッカーバーグは呆然としたという。ターゲティング広告を打って稼ぐフェイスブックにとって、ユーザーの個人情報は命綱だ。その収集をやめろと言われるのは事業を畳めと言われるに等しい。ザッカーバーグはクックの忠告を無視した。
それから2年、ザッカーバーグとクックの対立は全面戦争へと発展した。
(Mel Haasch/The New York Times)