プレミアム演舞場にトツプで踊り込む阿波扇=2019年8月12日、市役所前演舞場

プレミアム演舞場にトツプで踊り込む阿波扇=2019年8月12日、市役所前演舞場

 徳島市の阿波踊りを巡る徳島新聞の一連の報道に関し、事実と異なったり不適切な内容が含まれているとして、内藤佐和子市長が徳島新聞社に対して抗議し、記事の訂正と撤回、謝罪文の掲載を求めた。徳島新聞社は「記事は適切な取材による事実の報道であり、事実に基づく妥当な論評の範囲にある。抗議を受け入れることはできない」との回答書を市長宛てに送付した。市長の主張と徳島新聞社の見解は次の通り。(全5ページ)

 

2021年3月9日付2面「論説委員の目」 

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(1)昨夏中止となった阿波おどりの開催準備費用の負担について

■市が「事実と異なる、不適切」と主張する部分

「実行委員長の内藤市長も昨年4月に『契約の規定上も協議の対象となることから負担すべき部分はあると思う』と、費用分担に前向きな考えを示していた」にも関わらず、「実行委の事務局を務める市は『赤字補塡に税金は投入できない』と拒み続け、実行委も応じないことを決めた」とし、「なぜ姿勢を変えたのか、十分な説明はない。言えない理由がある、とみるのが自然だ。」

■市の主張

・阿波おどりの開催準備費用の負担については、阿波おどり実行委員会とキョードー東京共同事業体との間の問題であり、市長と事業体との間の問題ではないにも関わらず、市長の説明不足を指摘している点は事実のすり替えである。

・当該費用負担については、阿波おどり実行委員会事務局と事業体との間で協議を継続中という状況の中で、あえて市長は、1月28日の市長記者会見において、その理由を次のとおり詳細に説明するとともに、その会見において、徳島新聞社の記者も出席していたにも関わらず、「十分な説明がない」とした点は事実と異なる。

(1月28日 記者会見での市長説明内容)

  • 前体制では、徳島市観光協会が赤字を積み上げ、それを税金から補塡していましたが、そうしないように阿波おどり事業の民間事業者を募りました。民間事業者には、赤字になっても黒字になっても固定納付金を徳島市に払っていただく、倉庫代についても負担いただくという内容で事業者を募集しました。このような条件であったために応募を断念した事業者も実際にいると思います。ここで昨年の準備費用を全部補塡するということになれば、これは公平公正なのかという議論も出てくると思います。今回コロナという不測事態が起こった訳ですが、実行委員会は準備費用を負担できるような資金を持っていません。それなら市が負担すればいいのではないかという意見もあるかもしれませんが、そもそも、市が赤字を補塡しないようにするため民間事業者に委託したものなので、そこを解決しなくてはいけないと思います。議会の了承を得なければ費用の負担ができないということもあり、事務局はこの度の結論を出したのだと思います」、「そもそも、前市長が以前のような赤字を出さないようにということで作られた実行委員会であり、仕様書であり、契約書である訳です」と説明した。

  • 「市長として、実行委員長として、事務局の案に賛成ですか?」という記者の質問に対し、「これまでの経緯からみると、事務局の出した案でなければ説明がつかないと思います」と説明した。

■徳島新聞社の見解

 阿波おどり実行委員会の委員長は市長であり、事務局は市経済部だ。市が実行委を取り仕切っていたのが実態で、「市長と事業体との間の問題ではない」との指摘は当たらない。内藤市長は自身の見解を述べているだけであり、市民の納得を得られたとはとても言えない。十分な説明がなされていないと考え、その根拠を記事で示した。

 

(2)「市が事業体に契約解除を言わせようと仕向けている」との表現

■市が「事実と異なる、不適切」と主張する部分

踊り関係者から聞こえてくるのが「市が事業体に契約解除を言わせようと仕向けている」との見方だ。状況を見ると、そう捉えざるを得ない。

■市の主張

 そのような話は事実無根であり、あたかも、市長が策略を巡らして事業体との契約を解除させるよう誘導しているかのような印象を与え、市長の社会的評価を著しく低下させるものである。

■徳島新聞社の見解

 「市が事業体に契約解除を言わせようと仕向けている」との声は、踊り関係者だけでなく、市関係者からも聞いている。