アルケゴス・キャピタル・マネジメントが入居しているとされるマンハッタンのオフィスビル(写真:ロイター/アフロ)

 4月27日、野村ホールディングスは、米国投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引に絡むと見られる損失額として、約28.7億ドル(約3100億円)の損失を計上するを発表した。2021年3月期に2457億円(約23億ドル)を計上した後、2022年3月期にも620億円(約5.7億ドル)の損失を計上する見込みだ。

 日経新聞によれば、クレディ・スイスが5900億円、モルガン・スタンレーが1000億円、UBSが930億円、三菱UFJが300億円と合計で1兆円を超える。だが、どの報道を見ても、問題の本質をついていない。

 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は厳しい調査を実施すると述べており、グローバル市場を仕切る基軸通貨国としての矜持を感じさせるが、米国の主要紙の報道を見ると、米系金融機関の対応は総じて適切だったと言いたいような書きぶりである。

 米ウォールストリート・ジャーナルは、「野村『ウォール街の夢』遠のく、アルケゴス問題で(Archegos Fiasco Stalks Nomura’s Wall Street Dream)」という記事を出した。今回の問題は米株式市場で生じたことだが、業務執行能力の劣る外国人プレイヤーによる損失だと言外に匂わせている。

 一方、欧州の主要紙の論調を見ると、損失を被った金融機関がいずれもプライベート・バンキングを核とするスイスの銀行ということもあり、損失は両行のリスク管理の問題と批判を強めている。銀行業務と証券業務を兼業することで、両方の業務を幅広く提供できるユニバーサルバンクの限界が露呈したと見ることも可能だろう。

 日本メディアは対象を損失規模の大きい野村ホールディングスに絞り、米系証券との対応の差やガバナンスの問題を指摘している。金融庁と日本銀行もリスク管理体制などを調査すると発表しているところを見ると、ロシア危機やリーマン・ショックのようなイベント時と同じく、問題を一つと見立て、「リスク管理体制の不備」というアバウトな議論で収束を図ろうとしているのかもしれない。

 本稿では、野村ホールディングスと三菱UFJ証券ホールディングスの日系2社に焦点を当てて今回のアルケゴス問題を論じる。結論を先取りすると、両社の発表や、日本メディアの報道、金融当局の対応のすべてが的外れな印象を受ける。