[26日 ロイター] - トヨタ自動車は自動運転技術を担う子会社を通じ、米配車サービス大手リフトの自動運転部門「レベル5」を5億5000万ドルで買収する。トヨタとリフトが発表した。トヨタは同分野の開発体制を強化する。

子会社は今年1月に事業を開始したウーブン・プラネット・ホールディングス(東京)。同社として初の買収案件となる。レベル5の300人超の開発チームも取り込む。

ウーブン・プラネットのジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)は記者団に、技術と製品の構築には人材が必要で、この買収は人材を確保し、結集する第一歩になると説明した。

また、米シリコンバレーとロンドンに拠点を構え、富士山の裾野での実証都市「ウーブン・シティ」を拡張することも可能になるとし、モビリティー業界の劇的な変化に対応できる体制が整うとした。

リフトは売却資金の使途について言及していない。ただ、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの回復が続けば、今回の部門売却でEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の黒字化が従来想定の第4・四半期から第3・四半期に前倒しされるとした。

カフナー氏は、ウーブン・プラネットが投資と人員拡大を継続する方針だと述べたが、時期的なメドや将来的な買収計画についてはコメントを控えた。

ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表兼アナリストはトヨタの自動運転技術を含む事業目標に関し、「パートナーシップ、仲間を広げながら一歩でも実現に近づけていっている」と指摘した。

トヨタはこれまでも配車大手と緊密に協業してきた。既に中国の配車大手、滴滴出行(ディディ)と東南アジア配車大手グラブに出資している。

トヨタはリフトと競合する米ウーバー・テクノロジーズの自動運転部門にも出資していたが、昨年12月に自動運転車開発スタートアップ企業のオーロラが同部門を買収した。

トヨタは2月にオーロラとデンソーと協業し、ウーバーなどの配車サービw企業向けに自動運転ミニバンの開発・製造を行うと発表した。

<リフトは本業に集中か>

一方、リフトは現金流出が多い自動運転部門を売却することで、昨年の新型コロナウイルス感染拡大で大きな打撃を受けた配車事業の立て直しに注力できるようになる。

リフトはトヨタからまず約2億ドルを受け取る。残る3億5000万ドルは5年かけて支払われる。

リフトは既に、米アルファベット傘下のウェイモや韓国・現代自動車と米アプティブの合弁会社であるモーショナルと提携し、一部の都市で自動運転車のオンデマンド配車を行っている。

同社は一般顧客や配車サービスの運転手にリースしている車両約1万台からの運転データの収集を継続し、今回の合意の下、ウーブン・プラネットが自動運転車開発に同データを活用するのを認める。

また、配車サービスの繁忙期や悪天候への対応、自動運転車を禁じる地域などでは、運転手による配車が当面は重要な役割を果たし続けると見込む。

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