【林篤志】「サステナブル・イノヴェイション」はまだ答えのない世界

2021/5/1
プロジェクト型スクール「NewsPicks NewSchool」では、2021年5月から、2021年5月から「サステナブル・イノヴェイション」を開講します。
プロジェクトリーダーを務めるのは、「ポスト資本主義社会」の具現化に取り組むNext Commons Labファウンダーの林篤志氏です。
開講に先立ち、NewSchoolではオンライン説明会を開催。その内容をハイライトしてお伝えします。

フロントランナーとともに学び、共創

ここから「NewSchool」にどんな講師が来て、どのようにプロジェクトを進めていくのかについて簡単にご紹介できればと思います。
今回はおもに6名の方がゲスト講師として参画して下さっています。
1人目の大室悦賀(おおむろ・のぶよし)さんは、サステナブル・イノヴェイションという言葉を僕たちとの議論の中で生み出してくれた方でもあり、特にソーシャル・イノヴェイションの領域では、第一人者といわれる研究者でもあります。
大企業などの企業戦士が、どうマインドセットを変えればソーシャル・イノヴェイションなりサステナブル・イノヴェイションを生み出せるようになるのかを体系的に研究されている方です。
そこで、彼とともにマインドセットや会社そのものがどのような方向に向かっていくべきかについて、イントロダクションとして議論していきたいと思います。
続きまして、流郷綾乃(りゅうごう・あやの)さんです。よくご存じの方もいらっしゃると思いますが、ハエを利用したバイオマスリサイクルシステムを手がける生物資源ベンチャー、ムスカのCEOとして活動されていた方です。
若くして循環型社会をつくることを目指すスタートアップの代表を務めたわけですが、彼女はもともと広報戦略のプロでもあります。
SDGsや循環型社会を、どうすればビジネスに置き換えられるのか。どうすれば、その活動を通じて稼いでいけるかについての知見や方法論を、彼女からはレクチャーしていただこうと思っています。
続きまして、LIFULL ArchiTech(ライフルアーキテック)代表取締役で、LIFULLの地方創生推進部および、LivingAnywhere Commonsの事業責任者である小池克典さんに来ていただきます。
大室さんと流郷さんにはマクロな視点から、実際にサステナビリティとビジネスがそうすれば両立するかというところをお聞きしますが、小池さんはまさにライフルという上場企業の社員でありながら、いわゆるイントラプレナーとして活躍しています。
いわゆる社内決裁を始めとする大企業のさまざまなルールを熟知しうまく活用しながら新事業を生み出していくノウハウ、イントラプレナーシップ、事業創造の進め方について、実体験をもとにお話いただきます。
後半は3名の方ですね。白井智子さんは、新公益連盟という日本のNPOソーシャルセクターの取りまとめを行っている団体の代表理事の方です。
サステナブル・イノヴェイションを起こしていうえで、大企業やスタートアップや専門家だけでなく、社会課題の現場にダイレクトに関わっているステークホルダーをどう巻き込み、彼らの視点をどう活用していくかが非常に重要です。その意味で、さまざまなステークホルダーを巻き込むためのノウハウを白井さんからお伺いしたいと思います。
伊藤建さんは、日本におけるソーシャル・インパクト研究の第一人者。
サステナブル・イノヴェイションという領域で、実際にプロジェクトを生み出したとき、もちろんそれで稼いでいく必要がありますが、お金を稼ぐ以外の部分をどう指標化していくかが大切です。
つまりお金としては、これだけ投資してこれだけ稼ぐという一方で、これだけ貧困率が減ったとか、これだけ再生可能エネルギーの利用率が向上したとか。その辺りの社会的なインパクト、アウトカムの部分をどうすれば定量的に可視化し、それをもって次のビジネスや企業としての社会活動につなぐのかということについて、伊藤さんからレクチャーを受けたいと思います。
小田理恵子さんは自治体とのいわゆるコ・クリエーション(共創)の専門家と考えていただければ結構です。Public dotsという会社の取締役を務めています。
先ほど私は、実際に新しいものを社会実装していくうえで、「地域はいいですよ」「可能性がありますよ」とお話させていただきました。それを実践するには自治体とどう組むか、「toG」の領域でどう物事を前に進めていくかについてのノウハウが必要です。
そこで、自治体と民間が手を組みながら事業をつくっていくための切り口や、事業の進め方などについて、体系化された学びを小田さんから得ていきたいと思っています。
プロジェクトで得られるのはこういうもので、主な想定参加者はこんな形になります。企業にお勤めの方でもいいですし、自治体職員の方でもいいと思います。ここまでのお話で、共感して下さっている方であれば、もちろん誰でも参加いただけます。
ビフォー・アフターの話をすれば、今回は前半戦でインプットが中心となります。
もし後半も受講されるのであれば、ゼミ形式でプロジェクトを前に進めていきますが、後半に参加するかしないかは別にして、前半を終えた時点で、どんな立場の人であっても、プロジェクトを具体的に始めるという状態まで持っていきたいと思います。
社内で新規事業を立ち上げるのもよし、副業的に新規事業に関わるのもいいでしょう。もしかしたら、会社を辞めて起業する方がいらっしゃるかもしれません。自治体職員の方であれば、ここで出会った企業担当者と一緒に、地域で新しいプロジェクトを生み出すチャンスがあるかもしれません。
ここでの出会いをフックに、新たなプロジェクトを生み出し、それに何らかの形で参画することを、具体的なアウトプットにしたいですね。

答えもゴールも存在しない世界を切り拓く

実際、座学で「サステナブル・イノヴェイションってこういうことなんだね」とか「なるほど、世の中にこういうマクロな動きがあるんだな」ということを理解していただくというゴール設定では、ほぼ意味がないと思います。
なぜかというと、サステナブル・イノヴェイションとは、別に何か体系化されたものでもないわけで、答えのない世界を前に突き進むしかないというのが現状だからです。
どうすれば持続可能な地域社会、社会像を形にしていけるのかということを、多様な立場の人々やさまざまな技術・リソースを組み合わせて生み出していくしかないのです。
ですからそれを、何かうまくソフトランディングさせるのではなく、トライ・アンド・エラーを重ねて(新しいものを)生み出しながら答えを見つけていくという、「答えのない世界」を突き進むようなものなので、なんとなく学べて終わるということでは、ほぼ意味がありません。
最後に、スケジュールについて簡単にお話をしたいと思います。
Day1のイントロダクションは、ここに集まって下さる方々の出会いであり、お互いが何を考えていて、どんなことができるのかについて深く知る必要があると考えています。
オンライン中心ではありますが、前回のローカルプロデュースプロジェクトでも、ここで協業が生まれ、会社を立ち上げる方が出てきたり、当社(NCL)と一緒に事業や取り組みをスタートさせた大企業の担当者もいらっしゃいます。Day1のイントロダクションに限らず、最後までそういう場を作っていきたいですね。
前回のローカルプロデュースプロジェクトでも、この「NewSchool」の中でオフィシャルに用意されている場以外に、ツアーを開催させていただいたり、実際に会ってお話したり、食事をする場をつくるということも行っていますので、今回もそのようにしていきたいと思います。
Day2、Day3は先ほど紹介した、大室さんと流郷さんのパートになります。
Day4、Day5が、新規事業開発に特化したデザインコンサルティング・スタジオであるNEWhさんのパートです。
同社のメンバーに伴走していただき、新規事業のアイディアをどう生み出し、それをどうやって具体的なビジネスモデルに落とし込むかという作業を進めるためのノウハウを学びながら、形にすることに取り組みます。
彼らが持っている体系化されたデザインシンキングの手法から、それを通じて生み出される事業開発のモデルをこの2日間でなぞりながら、皆さんの新規事業開発や新事業プランの創出をお手伝いできればと考えています。
Day6が先ほどの小池さんによるイントレプレナーシップ実践に関するお話で、Day7からDay9までが、官民共創で新規事業をどう進めるかや、ソーシャルセクターと民間企業がどう連携していくのか。お金を稼ぐことだけでなく、社会的インパクトの評価をどう実装していくのかというところまで走って終わりにしたいというのが、今回の内容になります。
ゲスト講師にも、それぞれの領域で先頭を走っている皆さんをお呼びしていますし、私たちも実際にさまざまなフィールドで、多様な切り口でソリューションを構築したり、街そのものをゼロからつくっていくという、かなり壮大な実験をこの春から進めていく予定です。
そういう取り組みをリアルタイムで体感していただいたくほか、願わくばそこに参画をして下さる方たちとの出会いも期待し、このサステナブル・イノヴェイション・プロジェクトを「NewSchool」と一緒にやりたいと考えました。
ですから前半戦はインプットであるとはいいながらも、実践しプランしながらインプットしたものをうまく活用し、Day1からDay9までの講義の時間外で、「こういうプロジェクトをやりましょう」とか「こんなプロジェクトができませんか?」、「このプロジェクトに参画させてもらえませんか?」という相談が、私たち事務局に活発に寄せられるような状況になることを期待しています。
インプットだけを受けようということではなく、プロジェクトへの参画を志望される方にぜひ来ていただきたいと思っておりますし、僕たちもそういう仲間に出会えることを、非常に楽しみにしております。よろしくお願いします。
(構成:加賀谷貢樹、写真:是枝右恭、デザイン:九喜洋介)
「NewsPicks NewSchool」では、2021年5月から「サステナブル・イノヴェイション」を開講します。詳細はこちらをご確認ください。