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 浅瀬が少ない日本近海において、洋上風力発電における次世代の本命とされているのが「浮体式」である。業界では、浮体式の本格普及が始まるのは2030年ごろとみられていた。ところが、大幅な前倒しが進みそうだ。日立造船が、23年の商用化を計画しており、30年になると年24基以上もの浮体を建設する可能性があると意気込んでいるからだ。

 浮体式は、風車を数十メートル角のコンクリートや鋼製の浮体に乗せて海上に設置し、浮体が漂流しないよう係留ロープで海底につなぎとめる風車設置方式である。欧州では海底に基礎を造って風車を固定設置する「着床式」がメジャーだが、水深が深い日本周辺の海域では浮体式が適する。

風車を乗せたバージ型の浮体
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風車を乗せたバージ型の浮体
(出所:日立造船)

 国内で浮体式の本格商用に向けた目立った動きはまだ存在しない。現状ではコストが高すぎるためだ。「浮体の建設コストが約100万円/kWと着床式の2倍に上り、大規模に事業開発すると赤字になる公算が大きい」(日本風力発電協会)。こうしたコストの課題を解決できるのが、従来の予測では大体2030年ごろとされていた。

 日立造船は浮体の新工法によってコスト課題を改善し、実用化時期の大幅な前倒しを図る。同社によると、浮体の建設費を従来よりも約4割安い60万円/kWまで抑えられる見通しが立ってきたという。この大幅なコスト削減により現行FIT(固定価格買取制度)価格(36円/kWh)で採算をとることができ、23年には実用化できるとする。