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星野リゾートは大浴場の混雑状況を「見える化」する仕組みを独自に開発した。新型コロナウイルス下でも顧客が安心して施設を利用できるようにした。システム開発を内製できる強みを生かし、リリース後も使い勝手を高めている。

(写真提供:星野リゾート)
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 「とにかくスピードが求められる開発だった。内製組織を持つ意義は大きい」――。大浴場の混雑状況を可視化するサービス「大浴場IoT(インターネット・オブ・シングズ)」をわずか6週間で稼働させた開発劇について、星野リゾートの久本英司情報システムグループグループディレクターはこう振り返る。稼働から半年後の2021年1月には「混雑予測」機能を追加するまでに成長した。

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 同社は2020年4月7日に新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発令されたのを受け、顧客が安心・安全に施設を利用できるための対策・環境づくりを急ピッチで進めた。衛生管理の徹底に加え、密閉・密集・密接の「3密」を回避する仕組みとして新たに客室でのチェックインや、独立した食事処(どころ)の設置など、現場スタッフを中心に従来のサービスを一から見直した。中でも、3密回避のカギとなったのがITを駆使した大浴場IoTだ。内製組織を自社で持つ強みを生かし、「通常であれば要件定義から開発までに半年から1年はかかる」(久本グループディレクター)ところをわずか6週間、約1カ月半で開発。通常の「4倍速」以上のスピードでIoTデバイスから顧客向けシステム、従業員向けシステムまでを作り上げた。

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