(ブルームバーグ): ブリヂストンは今後の成長事業の柱と位置付けるモビリティーソリューション分野について、北米での買収候補の絞り込みが進み、年内にも決定できるとの見通しを示した。

石橋秀一グローバルCEO(最高経営責任者)は20日、東京都内の本社でインタビューに応じ、検討を進めてきた同分野の買収先候補について当初の20社程度から数社まで絞り込んだことを明らかにし、年内に決まる可能性について「そのつもり」だと述べた。

同社の株価は23日、前日比下落で取引を開始した後上昇に転じ、一時前日比0.7%高の4463円を付けた。

ブリヂストン、モビリティー事業強化へ米でM&Aも-欧州に続き 

ブリヂストンは仏ミシュランと並び、タイヤ製造で世界首位級のシェアを持つ。自動運転やシェアリングなど新技術の普及で自動車業界が変革期を迎える中、タイヤを製造販売する伝統的なビジネスモデルにとどまらず、車両から得られるデータを故障予防などに生かすソリューション事業を強化している。

2019年にオランダのデジタル地図会社トムトムから車両情報の管理を手掛ける子会社を9億1000万ユーロ(約1180億円)で買収。トムトムの事業基盤が弱かった北米地域の強化が課題となっていた。

ブリヂストン:蘭トムトムのモビリティー関連事業買収、1138億円

石橋氏によると、米国ではこの分野でトムトムのように圧倒的シェアを持つ企業はなく、カナダのジオタブなど比較的規模の小さな有力企業が多い。そのため、トムトム子会社のような1000億円を超す大型買収にはならないだろうとの見方を示した。

「今からブーストする」

今期(21年12月期)から始まった3カ年の中期事業計画では、企業の買収・合併(M&A)や戦略的協業などに3500億円を投じる方針だ。新型コロナウイルスの影響などで前期に69年ぶりの最終赤字に転落したブリヂストンが積極的に成長投資を行う背景には、足元の経営環境の大幅な改善がある。

石橋氏によると、米国と中国がけん引役となり、昨年夏ごろから始まった自動車業界全体の回復は今も続いている。商用車、乗用車ともに「在庫が極端に減り、なおかつ中古車の在庫も減っていて、値段も上がっている」という。

新型コロナ変異株の感染拡大や半導体不足などで自動車生産に支障が出ている中でも、ブリヂストンの1-3月期の販売は前年同期と比べ大幅に増えており、コロナ禍前の19年の同時期に近い水準としている。

また石橋氏は、各国で大規模な財政出動が続いている点にも触れ、「有事でこれだけお金を使っていくと、ものすごく今からブーストする(押し上げる)」と予測。「少なくとも短期間で急速にブレーキを踏むということはちょっと考えられない」と述べ、自社の業績も当面失速する可能性は低いとの認識を示した。

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