日米声明「台湾海峡」明記 初の会談、中国の威圧に反対
【ワシントン=重田俊介】菅義偉首相とバイデン米大統領は16日午後(日本時間17日午前)、ホワイトハウスで初めて会談した。両首脳は日米同盟の結束を示す共同声明をまとめ、中国が軍事的圧力を強める台湾海峡について「平和と安定の重要性を強調する」と明記した。「両岸問題の平和的解決を促す」との文言も入れた。
両首脳は「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」と題した共同声明をまとめた。外務省によると日米首脳間の文書に「台湾」が記されるのは1972年の日中国交正常化の前の69年以来およそ半世紀ぶり。
両首脳はまず通訳のみを交えて20分ほど話し、少人数と拡大会合を含め2時間半程度、協議した。バイデン氏は初めて対面で会う首脳として首相を選んだ。首相はバイデン氏の早期訪日を要請した。
対中国の戦略を擦り合わせた。首相は会談後の共同記者会見で「東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試み、地域の他者に対する威圧に反対することで一致した」と述べた。バイデン氏は「我々は21世紀に民主主義が勝利すると証明する」と強調した。
台湾への言及の背景には有事への懸念が高まっている状況がある。日米が結束して中国の行動に反対する姿勢を明確に示す必要性があると判断した。香港と新疆ウイグル自治区の人権状況を巡り、共同声明で「深刻な懸念を共有する」と表現した。
「日米両国は中国との率直な対話の重要性を認識する」とも盛り込んだ。「直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した」と表記した。
日本側は主要7カ国(G7)で唯一、対中制裁を科していない。首相は記者会見で日本の立場や取り組みをバイデン氏に伝えたと説き「理解を得られたと考えている」とも表明した。
首相は記者会見で「日米同盟の重要性がかつてなく高まっている」と指摘した。バイデン氏も「日本の安全保障を鉄壁で守ることを確認した」と語った。
共同声明で米国の「核を含むあらゆる種類」の能力を用いた日本防衛への揺るぎない支持を明記した。米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約5条が沖縄県尖閣諸島に適用されると再確認し「日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対」と足並みをそろえた。
首相は日本の防衛力を強化する決意を伝えた。米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設を着実に推進すると申し合わせた。
バイデン氏は冷え込む日韓関係の改善を望んでいる。会談では、北朝鮮への対応で日米韓3カ国が協力する重要性で一致した。北朝鮮による日本人拉致問題は日米が連携し即時解決を求めていく。共同声明で北朝鮮の核とミサイル計画に関連する危険に対処するため「互いに、そして、他のパートナーとも協働する」と唱えた。
日米はアジア太平洋地域の安全保障に関し、インドとオーストラリアを加えた4カ国による枠組み「Quad(クアッド)」の協力も重視している。新型コロナウイルスを巡っても日米や4カ国の枠組みで連携すると確認した。世界規模のワクチンの供給などの協力をうたった。
両首脳はミャンマー情勢について国軍による民間人殺傷を強く非難し、暴力の即時停止や民主的な体制の回復を求めていくと合意した。
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