[東京 17日 ロイター] - 訪米中の菅義偉首相は16日午後(日本時間17日未明)、バイデン大統領と会談後にそろって会見し、インド太平洋地域と世界に中国が及ぼす影響を議論したことを明らかにした。台湾海峡の安定、同盟の重要性などを確認したとした上で、日本が防衛力を強化していく決意も伝えたと語った。その後にシンクタンクで講演した菅首相は、中国と建設的な関係を築くことにも意欲をみせた。

<中国の威圧に反対で一致>

菅首相は会見で「3月の日米外交・防衛閣僚会合(2プラス2)で一致した認識を改めて確認し、その上に立って、さらに地域のために取り組むことで一致した」と強調した。今後の日米同盟の羅針盤となる共同声明を取りまとめたとした。

菅首相は、「インド太平洋地域と世界全体の平和と繁栄に対して中国が及ぼす影響について真剣に議論を行い、東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試みと、地域の他者に対する威圧に、反対することでも一致した」と述べた。

その上で「台湾海峡の平和と安定の重要性は日米間で一致しており、今回改めて確認した」と述べた。中国が軍事的な圧力を強める台湾、国際社会がイスラム系少数民族の人権状況を懸念する新彊ウイグル自治区を巡る議論の詳細は控えたが、「新疆ウイグルの状況についても日本の立場や取り組みを説明し理解を得られた」と語った。

北朝鮮による日本人拉致問題については、日米が連携し北朝鮮に即時解決を求めることを確認した。

<五輪への決意にバイデン支持>

両首脳は今夏の東京五輪・パラリンピックについても議論。菅首相が開催への決意を示すと、バイデン大統領が支持を表明したという。菅首相は会見で、米国の選手団派遣に関するバイデン大統領の発言内容について問われたが、明らかにしなかった。

このほか、デジタル分野やイノベーションの推進、ワクチン供給など新型コロナウイルス対策、気候変動などで協力していくことでも一致した。途上国を含め、各国がワクチンを公平に確保できるよう多国間や地域の協力を推進する。

  日米で温暖化ガスの排出削減を主導し、脱炭素化やクリーンエネルギーに関する「日米気候パートナーシップ」を立ち上げることでも合意した。

また、日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)に対して日米安全保障条約第5条が適用されることも改めて確認した。第5条は、日本の施政下にある領域への米国の防衛義務を定めている。

両首脳は、アジア系住民への差別や暴力事件が全米各地で増加していることも議論。菅首相は、人種による差別はいかなる社会でも許容されないと一致したと述べた。

菅首相は、1月に就任したバイデン大統領が対面で会談する初の外国の首脳となった。

<北朝鮮問題は日米韓で連携>

菅首相は会見後、ワシントンにあるシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)主催のイベントでオンライン形式で講演した。日本は日米同盟を強化する一方、多国間の協力も重視するとした。東南アジア諸国連合(ASEAN)が、自由で開かれたインド太平洋への関心を高めるよう促したいとも述べた。

国軍が市民を弾圧するミャンマー、国際社会がイスラム系少数民族の人権状況を懸念する新疆ウイグル自治区、民主化が後退する香港などについて、具体的行動を取ると語った。その一方で、中国とは安定して建設的な関係を築きたいとも述べた、。

このほか講演では、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記と会う用意があると改めて表明した。北朝鮮問題には日米韓で連携するとした。

*内容を追加しました。

(竹本能文)