2021/4/17

バブルか、革命か──「NFT」は何を変えるのか?

NewsPicks アナウンサー/キャスター
火曜夜10時からNewsPicksとTwitterで配信中の「The UPDATE」。
4月13日は「NFTは本当に価値があるのか?」と題し、国光 宏尚氏(gumi創業者/会長)、赤澤 岳人氏(OVER ALLs 代表取締役社長/アートプロモーター)、白石 陽介氏(ARIGATOBANK 代表取締役CEO)、せきぐち あいみ氏(VRアーティスト)、福田 淳氏(スピーディ 代表取締役社長)が徹底討論した。
2月から世界中で爆発的に盛り上がっているNFT市場。
ツイッター創業者のジャック・ドーシーのツイートが高額取引されたのが話題になり、 国内でも、せきぐちあいみ氏によるNFT作品が約1,300万円で即日落札された。その他にも米国ファーストフードチェーンのタコベルや、メルカリ、GMOといった日本の大手企業もNFT事業に参入し始めている。
クリエイターのみならず民間企業もが虜になる、この「NFT」とは一体何なのか。

デジタルデータの「価値」を表現

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、デジタルアートやツイートなど、デジタル上のデータが唯一無二であり、なおかつ所有権があることの「証明書」のようなもの。目に見えないデジタルデータに鑑定書がついたイメージだ。
ブロックチェーン技術を使っているため、複製品が作られてもオリジナルであることが証明でき、あらゆるデジタルデータの価値を表現することができる。
クリエイターにとってNFTの魅力は、プラットフォームが仲介せずとも成立するので手数料が安くなる上に、初回の販売以降も作品が転売される度にロイヤリティが得られることにある。また、マーケットが世界共通のプラットフォームにあるため、グローバルで注目を集めることも容易だ。
NFTを所有するユーザー側のメリットとしては、価値のあるものを簡易な手続きで購入することができるので、投機の対象になる点などがあげられる。
しかし、詐欺やマネーロンダリングに利用される可能性があり、パスワードを忘れると二度とお金が引き出せなくなるリスク等、懸念点があることも否めない。
それでもなぜ、NFTはここまでブームになっているのか。
その価値を知り尽くす論客と共に、NFTの「普遍的な価値」を紐解いた。
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INDEX
  • デジタルデータの「価値」を表現
  • NFTはバブルか、革命か
  • アーティスト側がNFTに求めるもの
  • グローバルに切り開かれる価値
  • 今回のキングオブコメント

NFTはバブルか、革命か

福田 今のNFTの価値は「価値があると思う人にとっては価値がある」状態。その人にとっての実態価値を見つけた時に本物になる。
数年前までは、貨幣としての価値があるか否かという「お金儲け」的なことでしか論じられてこなかったが、今はAmazonのようなNFT版マーケットプレイスができて、素人でもNFTを買えるようになった。ここにきてようやくNFTの価値を探す旅が始まったように思える。
せきぐち NFTはバブルどころか、全人類が使うものになる。
デジタルデータがこれだけ身近になっているなかで、アートのみならず、デジタルデータの売買が日常的に行われる流れは必然的。それがより発展してきた時に、値段や価値をつけられるNFTの仕組みは必要になってくる。
国光 NFTがすごいのは、ネットだけど限定商品が作れること。NFTはブロックチェーン技術を応用したものなので、その商品が本当に世界で1つだけのものだということが証明できるようになった。
赤澤 NFTはアートの範囲を広げる。
なぜアートに価値が生まれるのかというと、例えばアメリカの画家ジャクソン・ポロックの絵が何百億円という額で落札された理由は、彼が初めてアクション・ペインティングという手法を使ったから。
人類で初めて月面に降り立ったアームストロング船長の靴に価値がつくのと同じで、世界で初めてのことをやり遂げた人物だと誰しもが証明できるから価値がつく。世界初のツイートにNFTオークションで3億円もの値段が付くのも自然。
アートの本質とは、世の中を変えたことや世界に新たな価値観を示したことといった「偉業」にある。そうした、従来アートが持っている「Wow!」の感情を、NFTを使えば表現ができる。
赤澤 岳人(株式会社 OVER ALLs 代表取締役社長/アートプロモーター)
白石 NFTという仕組み自体は無価値。
コンテンツ売買プラットフォームとしては成長性を感じるが、それよりもプラットフォームの中にある作品自体にこそ価値がある。
Beepleの75億円のNFT作品を落札したのは、世界最大のNFTファンド運営者であったが、本当にアートが欲しい人が入札したのではなかった。NFTマーケットが盛り上がり、広がっていくと、結局自分たちにお金が入ることになるので、そういったクリプト(暗号通貨)を大量に持っているお金持ちの中で値段が吊り上っているバブルなのではと思っている。
本来は作品そのものの価値に価格が収斂し、一巡した後に、NFTアートそのものの価格が形成されていくのではないか。
福田 2009年に中国でアートバブルが弾けた。
そもそもアートの市場構造がどうなっているかというと、まず、プライマリーギャラリー(注※画廊主が作品の値段を決める、第一次ギャラリー)で目利きのキュレーターが、まだ価値があるかわからないものを集めて展示する。そのマーケットの中で価値が出たものが、セカンダリーマーケット(二次市場)に出て、サザビーなどのオークションハウスに買われていく。アートには、こうした2つのマーケットがある。
中国ではインターネット黎明期にそういった制度が整っておらず、ネットで物凄くアートが売れた。そして、全く無名なアーティストが大金持ちになった結果、バブルがはじけた。
本来、作品の価値というのは多様な視点でキュレーター達が批評を積み上げて、それが価値になっていくのだが、それがなかったから砂上の楼閣となった。
福田 淳(スピーディ 代表取締役社長)
今回75億円で落札された作品は、5,000日かけて作ったという労力に価値がある。せきぐちさんもVRアートを作り続けてきた過程でNFTとマッチして高額落札された。つまり、その作品の価値が元々あるから認められたということ。
せきぐち NFTアートがここまで高額取引されたのも、アートが持つ「Wow!」の部分、つまり、ストーリーや体験という現代ならではの価値が評価されたのだと思う。
古坂 「ストーリー」が「ヒストリー」に変わっていくことで価値が高まっていくのでは?
国光 これまでのインターネットの歴史で出てきたビジネスモデルは、大きく分けて広告とEコマースの2つだった。それがNFTの登場により、全く違うビジネスモデルが生まれつつある。ブロックチェーンが起こしている革命のひとつだ。
今までのインターネットは「情報」をやり取りするだけだったが、ブロックチェーンが出てきて「価値」のやり取りを可能にした。デジタルデータだけどコピーができなくなった。
特に、エンタメ業界とインターネットが出てきて、違法を含めてコピーが自由になったように、コピーのコストがゼロになってしまったから、デジタルコンテンツそのものの価値はゼロになった。
物の価値は、需要と供給で決まる。コピーのコストがゼロになると、供給が無限大になるので価値が下がる。
ところがNFTの登場で、この供給量を自分で制限できるようになった。そのため、デジタル空間上の中でマネタイズが完結できる経済圏が作れるようになった。

アーティスト側がNFTに求めるもの

赤澤 デジタルだけでなくリアルでも同様に、従来価値を表現するのが難しかったものが、NFTの登場でその価値を表現できるようになった。ジャック・ドーシーのツイートは「世界初のツイート」という現象として、リアルな社会で起きたこと。つまり、歴史の一部。その歴史に価値をつけられることは物質からの開放だと思っている。
今現在、通貨というものは国家が保証しているが、ブロックチェーンというシステムのなかでは、中央が存在しない状態で保証される。
NFTは保証できる範囲を広げてくれたと解釈しているが、NFTは「世界初のツイート」といった「現象」としてのアートに対して価値をつけることができる。
せきぐち あいみ(VRアーティスト)
せきぐち リアルでもデジタルでも、アートで大事なのは「心に残る」とか「感じる」こと。それがあらゆる形で広がっていくことに意味がある。
多分もう少ししたらゴーグルをかけるだけで、今スマホでやっていることが全部出てきて、VR空間に持っている部屋が実際の部屋よりも大事に思うなんていう時代が来る。
そうなると、部屋の模様替えや土地の売買もバーチャルで行われるようになってくる。デジタルアートの可能性はブロックチェーンにより広がっていくと思う。

グローバルに切り開かれる価値

福田 トークンや仮想通貨を持ってる人はまだ少ない。NFT作品を買っている人はもっと少ない。でも持っている人にとっては日常。持っている人にしか分からない価値がある。それが新しいトークンエコノミーであり、革命的なことだ。
国光 アーティストにとってのメリットは、市場がグローバルに開かれている点がある。例えばブラジルのアーティストが作った作品をアフリカの人が買い、それを二次流通マーケットに出してウクライナ人が買う、といったことができる。
また、二次流通にもメリットが。リアルで考えるとわかりやすいのだが、例えばメルカリの手数料は10%だが、メルカリで二次流通をしていっても売買の度にオリジナルの作りてにはお金は入らない。音楽でいえば、2.5%がプラットフォーマー、7.5%が著作権者に入る仕組み。つまりこれまでは、二次流通でクリエイターにはほとんどお金が入らなかった。
JASRACであっても、労力をかけて権利保護をしてもグローバルでのトラッキングが難しかったりする欠点もある。
けれど、NFTならば、一回プログラムを書くだけでいいので、以降100万回、1,000万回取引があっても最初の作業だけで足り、かつクリエイターに手数料が入り続ける。
そうすると、アーティストにとっては何の手間も掛からず、手数料も取られず、しかもロイヤリティ収入が得られる仕組みが選ばれるだろう。
世界中の人に届けられて、なおかつ二次流通で収入がクリエイターに入り続けるというNFTのしくみは、クリエイターにとって確固たる価値である。
国光 宏尚(gumi創業者/会長)
国光 ジャック・ドーシーのツイートは未来のロゼッタ・ストーン。
デジタルアーティストであるBeepleは10年前から、デジタルアートがほとんどないころから毎日とりあえず誰も見なくても十数年書き続けた。
それでNFTのブームが来た時にこれを出した。彼が5,000日間書き続けたものをコラージュしたという作品。
彼がNFTの未来を信じてやり続けた「魂」に価値がついている。既存のアートをNFTにしたら売れるのではなく、新しい価値観をどう提示するか、今までの代替えではない。
赤澤 ドーシーのツイートもアートの本質。
NFTはロマンやストーリーなど本来価値化しづらかったものに価値を付けてくれる、すごくワクワクするもの。
その革命的技術としてのNFT。今まで表現できなかった価値を表現することが出来る上に、いきなり世界に開けていて、かつ価値のあるものを作れば対等な対価が得られる。
アート以外にも他分野での応用は十分可能だろう。

今回のキングオブコメント

NFTそれ自体に価値はない。作品自体に価値があり、作品のもつストーリーや背景を価値として表現できるものがNFTなのである。
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