2021/4/20

【イモトのWiFi 社長】売り上げ98%減。瀕死から1年でV字回復

ライター&編集者
エクスコムグローバルという社名は知らなくても、海外用Wi‐Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」や、新型コロナウイルスPCR検査の「にしたんクリニック」なら聞いたことがあるという人は多いかもしれない。同社を25年前に創業したのが、西村誠司社長だ。

コロナ禍で海外旅行客は消え、海外用Wi-Fiレンタル事業は売り上げ98%減。瀕死の状態に陥るも、西村社長は新事業に活路を見いだし、わずか1年足らずでV字回復。存亡の危機を乗り越えた。

優れたマーケティングと経営センスがあれば、どのような環境にあっても成功に導ける。それを体現しているのが、西村社長だ。その不屈の精神はいかに磨かれてきたのか。今につながる西村社長の軌跡をたどる。(全7回)
西村誠司(にしむら・せいじ)/エクスコムグローバル 社長
1970年愛知県生まれ。名古屋市立大学卒業。93年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。95年インターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立、社長に就任。97年海外用レンタル携帯電話事業をスタート、その後の成長の足がかりに。2012年海外用Wi‐Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」ブランドの提供を始める。19年メディカル事業をスタート、「にしたんクリニック」の立ち上げを支援。20年にはわずか数カ月でPCR検査サービスを実現。従業員313人(20年12月末現在)。
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  • 売り上げ98%減、恐怖で震えた
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  • 1年足らずでV字回復

売り上げ98%減、恐怖で震えた

昨年の今ごろは、目の前が真っ暗でした。売り上げが98%減まで落ち込んでいたからです。
エクスコムグローバルは、海外用Wi‐Fiルーターのレンタルサービス「イモトのWiFi」などを手がけています。2019年8月期の売上高は87億円で、年間利用者数は100万人以上と、近年の業績は好調に推移していました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、様相は一変しました。20年3月の売り上げは前年同月比で半減。4月の緊急事態宣言以後は海外渡航がほぼゼロになったことが影響して、98%減という結果になりました。
当社の顧客の大半が海外渡航者ですから、想定していたとはいえ、恐怖で体が震えました。売り上げはないに等しいのに、家賃や人件費など出費はかさむばかりだったからです。
日頃から銀行と良好な関係を築いていたので、4月に何とか30億円を調達できましたが、大出血は続きました。
そうした状況でもどこか私は楽観視していた気がします。「梅雨明けして暑くなればコロナも沈静化して、ハワイや韓国など一部の地域にはお客様が戻ってくるのでは」と思っていたのです。
第2波の到来で、そんな甘い考えは消え去りました。これは長期戦になる。Wi‐Fi事業の回復を待っている場合ではないと悟ったのです。

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