2021/4/15

【秘録】スナップチャット創業者に、未来を賭けた投資家

ベンチマーク(BENCHMARK)。
シリコンバレー最高峰のベンチャーキャピタル、ベンチマークの公式ホームページは、たったひとつメルアドが書かれているだけだ。
1995年に生まれたこのVCは、ごく少人数のパートナーたちが、選び抜いたスタートアップに「フルコミット」することで知られている。
投資先にはツイッターやインスタグラム、ウーバー、スナップチャット、ドロップボックス、ウィーワークが並び、世界にその名をとどろかせた起業家たちを、初期から支えてきた。
NewsPicksはベンチマークを率いるトップ投資家、ピーター・フェントンに独占インタビュー。メガベンチャー投資の舞台裏について聞いた。

スケールしない「常勝集団」

ベンチマークという投資集団では、わずか5〜6人のパートナーが、完全にフラットで、対等であるパートナーシップで働いています。
もともと伝統的なシリコンバレーのベンチャーキャピタルには、ピラミッド型のヒエラルキーがありました。そうした上下関係を、創造的にぶっ壊したのです。
別に、私たちが共産主義に入れ込んでいたり、平等主義を愛しているからではありません。
これは投資先のスタートアップを、最高の形でサポートするための発明です。
人間の脳みそがいろいろな機能で作られるように、ベンチマークでは5〜6人の異なる能力や人脈を持ったパートナーが、ひとつの人格のように起業家を支えます。
そして10倍、100倍、1000倍という巨大なリターンをもたらすホームラン案件も、誰が持ち込んだかは関係なく、その利益はぴったり平等に分ける。
(写真:Bloomberg / Getty Images)
パートナー全員が惜しみなく、リソースを共有します。投資先が雇うべき優秀な人材を共有したり、ノウハウを共有したりと、一致団結して投資先を支えます。
「めっちゃ賢いアイディアだ。 なぜみんなそうしないの?」と、思うでしょう(笑)。
実は、この戦略はスケールしないのです。わずか5〜6人の少数精鋭チームが、それぞれ個別に「そうしよう」と、同意することが必須だからです。
一方でベンチマークは、スタートアップの「揺りかごから墓場」までコミットするVCです。平均すると10年以上、投資先の経営メンバーとして支援を続けます。
だから、私たちは黎明期のスタートアップにはコミットしません。すでに成長期を迎えたスタートアップにもコミットしません。すでに羽ばたいたスタートアップにもコミットしません。
我々はたったひとつ、そのスタートアップの全生涯を付き合える、アーリーステージ(創業初期)向けのファンドだけ運営しています。他のVCのように、規模拡大もしません。
ひとたびほれ込んだ相手には、上場するか、廃業するまで、歩みをともにします。
(写真:Charles Donaldson / EyeEm )

フェイスブックの「死角」

スナップチャットは、私たちが初期から投資したスタートアップの一つです。
2011年、まだスタンフォード大学の学生だったエヴァン・シュピーゲルが、新しく発明したプロダクトでした。
スマートフォンで写真を撮影する。それをメッセージとして相手に送る。相手が見ると、わずか10秒で消えてしまう。そんなアプリでした。
彼は、いつも新しいアイディアを練っていました。
彼の胸の内には、ある考えがありました。それはフェイスブックの全盛時代にあっても、SNSの世界には、大切なものが欠けていると。
あえて言葉にするなら、それは「無防備で、ありのままのコミュニケーション」です。